2005 Fiscal Year Annual Research Report
地方都市の近代建築に対する復元と評価に関する研究-愛知県でのケース・スタディ-
Project/Area Number |
14550635
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
西澤 泰彦 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助教授 (80242915)
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Keywords | 地方都市 / 近代建築 / 復元 / 評価 / 愛知県 / 鉄筋コンクリート造 |
Research Abstract |
本研究は、日本の地方都市に焦点を当て、地方都市が近代化していく過程において建てられた近代建築について、文献調査からの復元と、それらに対する評価を試みる研究であり、そのケース・スタディとして、愛知県下の豊橋・岡崎・刈谷・西尾・一宮・津島の6都市の近代建築を対象とした。 平成17年度は研究の最終年度に相当し、「近代建築復元リスト」における情報の補充と、主要物件に対する補足調査をおこなった。さらに、6都市における近代建築の中から主要な物件として、旧岡崎銀行本店、旧亀城尋常高等小学校本館、旧依佐美送信所本館、同機械棟、岩瀬文庫書庫、西尾高校武道場、旧井桁屋、旧名古屋銀行津島支店、一宮市役所本館、旧木曽川町会議場、豊橋市公会堂、旧第15師団司令部、旧第一銀行豊橋支店、を取り上げ、様式・意匠、構造・材料、平面、景観という視点から、評価を試みた。 その結果、これらの近代建築は、従来の日本近代建築史の枠組みでは説明できない新しい価値を有することが判明した。例えば、旧岡崎銀行本店は20世紀初頭に流行した「辰野式」の外観を持つが、新しい建築様式であるセセッションが取り込まれている。旧亀城尋常高等小学校本館では、柱・大梁・外壁のみをRC造としながら、小梁・床・小屋組を木造とした混構造であり、RC造技術の地方都市への普及を示す好例である。また、旧井桁屋は、愛知県内で2番目に古いRC造の百貨店建築であり、地方都市の近代化を示す典型例であるが、平面は客の入口と出口を分離し、かつ、客の下足を入口で預かり、出口で商品と下足を渡すという19世紀末の百貨店の形式を残していた。 このように、様式・意匠、構造・材料、平面、景観という視点を立てると、従来の研究では見落とされていた新しい評価が可能である
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