2002 Fiscal Year Annual Research Report
近代合理主義と伝統的有機性の対立と調整に関する空間システム論的研究-1930年代のドイツ近代建築家の国外での活動を事例として-
Project/Area Number |
14550637
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉本 俊多 広島大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00127664)
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Keywords | ブルーノ・タウト / トルコ / 1930年代 / 建築様式 / 有機主義 / グローバル化 / 近代建築 |
Research Abstract |
建築家ブルーノ・タウトのトルコ時代(1936〜8年)における建築作品について、実施作品6件の現地調査、現地研究者との意見交換、計画案の図面収集とCADを用いた復元と形態分析、建築論的な著書についての文献研究、関連する既往文献、研究論文の収集を行った。実施作品の建築形態構成、細部意匠の詳細な分析からは、多様な変化を示す地形を背景として、ドイツ時代に開拓された表現主義のスタイル、日本滞在時に吸収した数寄屋風の建築・装飾スタイル、現地トルコの建築様式の精髄を融合した、独特の有機的な風景デザインを完成していたことを明らかにした。建築理論においては、日本時代、トルコ時代に書かれた建築理論書における概念構成の分析から、世界の多様な歴史的建築要素を吟味することを通して普遍的なプロポーション理論を形づくっていたことを明らかにした。計画案の復元的研究においては、トルコ国会議事堂等の分析から、ドイツ時代の表現主義的な都市空間理論をもとに、古典主義の抽象的な形態構成へと移行しつつ、社会構造を象徴表現する独特のデザイン手法を開拓していたことを明らかにした。これらを総合的に評価して、ブルーノ・タウトの1930年代における試みは、世界的に普及しつつあったインターナショナル・スタイルの一元的な形態システムの方向性とは対照的に、建築様式の地域的、歴史的な多様性を許容しつつ、かつ世界普遍の造形システムを開拓して、より有機的な景観デザインに至ろうとする重要な試みであったことを明らかにした。それらは1930年代という時点における初期グローバル化に対応したデザイン方法を開拓しようとする試みだったと言え、近代建築史上において大きな意味を持つものだったと評価することができる。
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