2002 Fiscal Year Annual Research Report
信仰に係わる建築空間の志向過程に関する理論的および建築史的研究
Project/Area Number |
14550643
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Research Institution | Fukuoka International University |
Principal Investigator |
山本 輝雄 福岡国際大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10038002)
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Keywords | 堂庫裡建築 / 所謂"座敷本道" / 本堂 / 民家 / 浄土真宗 / 道場 / 御座元 / 黄檗派禅 |
Research Abstract |
「信仰に係わる建築空間」についての実証的研究を進める上で、仏教に関する範囲に最初から限定しているが、禅と念仏に係わる信仰の建築空間を研究対象としており、禅では黄檗派寺院を、念仏では浄土真宗の信仰の場所について、研究を深めることができた。 黄檗派寺院の本堂建築の歴史の中では、具体的に部屋名の分かる明治13年(1880)の『佛器什物取調帳』(萬福寺文華殿蔵)の略平図面を使って、福岡県南筑後地方におけるかつての旧柳河藩領内において、筆者が提示している所謂"座敷本堂"について、建築的な特質を指摘した。すなわち、"座敷"という客間を最上位の部屋として用いてきた一般の日本人の伝統的な住まい(民家)の在り方の中で、この"座敷"に代わって仏教寺院としての本尊安置の場所である部屋として"本堂"に当てた本堂建築である。その際に二通りの類型に分類できた。一つは"座敷"を"本堂"に完全に転用した所謂"座敷本堂"であり、他の一つは"座敷"はそのまま保存してさらにこの"座敷"の上位に"座敷"を付加した所謂"座敷本堂"であることを、研究発表して明確にした。 江戸時代における浄土真宗の信仰の場所としては仏教寺院においてのみ行なわれていたと単純に考えられてきたし、日本建築史研究の分野でも浄土真宗寺院の建築のみを調査対象としてきた。それに対して、筆者は浄土真宗を信仰する場所としては、未だ仏教寺院に成らない前の形態である"道場"であるとか、民家の中で特別の"御座元"という"住まい"も研究すべきであるして、江戸時代後期から明治時代前期の頃の諸建物についての調査報告をこれまでにも行なってきた。今年度の研究では、未だ歴史家も十分に研究していない江戸時代中期の3つの古文献を探し出してきて、浄土真宗の信仰の場所して、かなり広く"道場"とか"御座元"が歴史的に広がっていた実態について、研究発表して解明した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 山本 輝雄: "黄檗派寺院の所謂"座敷本堂"に関する建築史上の位置付けについて-旧柳河藩領内における史料から-"日本建築学会九州支部研究報告. 第42・3号. 441-444 (2003)
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[Publications] 山本 輝雄: "浄土真宗信仰の場所の存在容態についての建築史的一研究-江戸時代中期における大分県宇佐地方に関して-"日本建築学会九州支部研究報告. 第42・3号. 445-448 (2003)