2004 Fiscal Year Annual Research Report
バブルの動的挙動をセンサーとしたカスケード損傷効果の研究
Project/Area Number |
14550654
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小野 興太郎 島根大学, 総合理工学部, 教授 (40106795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 光貴 島根大学, 総合理工学部, 助手 (80379693)
荒河 一渡 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 助手 (30294367)
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Keywords | 照射損傷 / ヘリウムバブル / 電子顕微鏡その場観察 / Cu5 / Fe / Au |
Research Abstract |
1.バブルの挙動をセンサーとしたカスケード損傷効果の研究 10keV He^+イオンを照射することにより、あらかじめヘリウムバブルを導入したAu,Cu,Si、Fe合金試料に、100-400keVの自己イオンを照射したときの、バブルの動的挙動を電子顕微鏡その場観察した。その結果、熱的な移動が起こらないような室温付近においても、間歇的、局所的移動が誘起される様子が観察された。動いたバブルの全バブル数に対する割合は、TRIMコードにより計算したバブルとサブカスケードの相互作用が起こる確率とよく一致した。バブルの移動の範囲は、サブカスケードのサイズ(2〜4nm)以内であったが、移動に要した時間は0.3〜1秒であった。これらの結果は、カスケードによる熱スパイク効果と局所的高密度原子空孔と、バブルとの相互作用によってバブルの移動が誘起されることを示唆している。バブルをセンサーとすることで、リアルタイムでカスケードに関する新しい知見が得られることを示した。更なる発展が期待できる。 2.Fe,Fe-9Crからの注入ヘリウムの熱放出過程 FeおよびFe-9Cr合金に注入したヘリウムの定速昇温にともなう熱離脱特性と内部観察を対比させて、ヘリウムの捕獲、離脱機構を調べた。5個の放出ピークが観測され、内部組織の変化と良く対応していることが判明した。低温側では主に転移ループに捕獲されたヘリウムの放出、高温側では、ヘリウムバブルの移動による放出、そしてガンマ相変態にともなう放出であることが判明した。Fe-Cr合金では、Crの転位やバブル表面への偏析により、これらのピークを高温側にシフトさせる事が分かった。 3.バブルと転位との相互作用と転位ループの一次元運動 ヘリウムバブルは転位のひずみ場に捕獲されやすく、微小バブルはひずみ場に沿って容易に熱運動できることを見出した。バブルの移動方向は、転位線方向とともにすべり方向にも追随した。バブルは、ひずみ場のセンサーとしても利用できる可能性を示した。 Fe中の微小1/2<111>ループの挙動を電子照射下および焼鈍下においてTEM観察し、そのBurgersベクトルが他の1/2<111>または<100>へ自発変化する様子をそれぞれループの移動方向の変化および電子顕微鏡像の変化から捉えた。さらに、その実現の可能性および要因を古典MD計算によって検討した。Fe-9Cr合金では、Crのループ周囲への偏析効果により1次元運動が抑制された。しかし、低温では、Crは微小なループの密度を高める効果があり、ループ同士の相互作用によって1次元運動が誘起される可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)