2002 Fiscal Year Annual Research Report
フルカラー表示のための芳香族スピロ構造をもつ耐熱性有機EL材料の開発
Project/Area Number |
14550789
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木村 真 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30144124)
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Keywords | 表示素子 / 有機EL / ELデバイス / ホール輸送材 / 発光層材料 / 芳香族 / スピロ構造 / ジベンゾ[g, p]クリセン |
Research Abstract |
次世代の表示素子である有機EL(Electroluminescence)は、フルカラーでの実用化目前で、耐熱性や非晶質性にすぐれる有機材料が求められている。本研究は、積層型有機EL素子のホール輸送材および発光層材料に用いるべく、芳香族スピロ構造を活用して新規有機材料の開発を行ってきた。主な成果を述べる。 (1)ホール輸送材としてのテトラアエニルベンジジン(TPD)のスピロ環をもつ二量体の系は、考案した4系列のうち今年度計画の残された1つを予定通り合成でき、学会発表した。合成・構造・物性について、この分野でのパラダイムとすべく、データの吟味を急ぎ、一流雑誌への投稿準備を急いでいる。 (2)上記の拡張であるスピロ三量体の系は、トルキピンを用いることでTPD三量体化物の最初の例として合成できた。この合成にはケトン体と我々のいう「スピロ化剤」が必要で、後者は準備段階から2年かけてついて合成できたことに負う。これは今後の展開にとって財産である。目的物の耐熱性は良好で、150℃以上の使用に耐え、このクラスでは世界最高レベルであった。また、ELデバイスとしての評価は、満足すべき結果であった。それゆえ、この知見を速報として発展する準備をしている。 (3)発光層材料として、我々が独自展開している蛍光性にすぐれるジベンゾ[g, p]クリセンの系は、耐熱性をもたせるための二量体への変換が予想外に難渋しており、種々の工夫で対処している。他方で、ホール輸送材とする試みを行ったところ、いくつかの誘導体の中から、すぐれたEL特性を示すものが見つかった(2003.春学会発表)。この中で置換体を設計する一つの指針を得た。まだまだ、おいそれと物性を予測できるほどにはこの分野は成熟していない。現在、こちらからアプローチすることを企て、楽しみながら研究の展開を行っている。
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