2002 Fiscal Year Annual Research Report
ゼオライト光化学の開拓:吸着分子のカチオン-π相互作用および拡散運動の解明
Project/Area Number |
14550796
|
Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
橋本 修一 群馬工業高等専門学校, 一般教科・自然科学系, 教授 (70208445)
|
Keywords | ゼオライト / 希土類イオン / 芳香族分子 / 発光 / 時間分解分光 |
Research Abstract |
電荷補償陽イオンをTb^<3+>などの希土類イオンに交換したY型及びL型ゼオライト細孔内に取り込まれた有機分子を励起し、希土類イオンへエネルギー移動が起こる様子を時間分解発光により観測した。その結果、分子やゼオライトの種類により発光増幅率が著しく違うこと、L型の方がエネルギー移動の速度が非常に速いことがわかった。さらに、ベンゾフェノン/Tb^<3+>-Y及びナフタレン/Tb^<3+>-Yでのエネルギー移動の速度定数を決定した。85%Tb^<3+>で交換したNa^+-Y(以下Tb^<3+>-Y)にベンゾフェノン(BP)、ナフタレン(Nap)、ビフェニル(Bip)等を吸着させ、これらを光励起するとTb^<3+>の^5D_4レベル(20500cm^<-1>)からの強い発光が観測された。これまでよく研究されている希土類錯体では、励起された配位子からのエネルギー移動により、希土類イオンからの発光が観測された。ゼオライト吸着系においてもその閉じ込め効果によりエネルギー移動が溶液等に比べて著しく増強された。BPでは担持量を変えても発光の時間変化は影響を受けないが、Napでは低担持量で立ち上がり、減衰とも遅いのに対し、担持量を上げていくと両者が速くなる現象が見られた。この結果は、BP-Tb^<3+>とNap-Tb^<3+>とでエネルギー移動の反応スキームが異なることで理解される。Tb^<3+>発光の立ち上がりの遅い部分は芳香族分子の三重項からのエネルギー移動と考えられる。拡散反射吸収スペクトルから見てBPはゼオライトのプロトンサイトに結合してプロトン化し(BPH^+)動きにくくなっていると推測される。この場合、エネルギー移動はBPH^+(triplet)→Tb^<3+>の一方向的であると考えられ、しかも、減衰速度定数は4.1x10^2s^<-1>で、Tb^<3+>の^5D_4レベルの直接励起で観測される減衰定数と一致した。これに対して、Nap-Tb^<3+>系ではエネルギー移動が可逆的であるため、担持量依存性が見られたと考える。Nap-Tb^<3+>系ではNap三重項の減衰自体がNap分子によって自己消光を受けることが過渡吸収の測定からわかった。以上の考察に基づいて導いたエネルギー移動の反応スキームに従ってシミュレーションを行った。注目すべき点は、ゼオライト吸着系でも三重項-Tb^<3+>の励起錯体が一定の時間保持されるため、錯体に類似したエネルギー移動が効率よく達成されることがわかった点である。また、ゼオライトの構造も重要な因子である。チャンネル型ゼオライトLを用いた場合、エネルギー移動速度定数が2桁以上大きくなることが観測された。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] M.Kojima, M.Nakajoh, C.Matsubara, S.Hashimoto: "Photooxygenation of aromatic alkenes in zeolite nanocavities"J. Chem. Soc. Perkin 2. 1894-1901 (2002)
-
[Publications] S.Hashimoto, S.Kirikae, S.Tobita: "A kinetic study on energy transfer between guest aromatic species and rare earth charge-compensating cations within zeolites"Phys. Chem. Chem. Phys.. 4・23. 5856-5862 (2002)
-
[Publications] S.Hashimoto: "Zeolite photochemistry : Impact of zeolites on photochemistry and feed back from photochemistry to zeolite science"J. Photochem. Photobiol. C : Photochem Reviews. 4(in press). (2003)