2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14550818
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金原 数 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (30282578)
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Keywords | シャペロニン / ナノクラスター / ATP |
Research Abstract |
これまでに、半導体として知られている硫化カドミウムナノクラスターとシャペロニンを用いて、ナノデバイスの構築を試みた結果、DMF溶液中で調製した硫化カドミウムナノクラスターを大腸菌由来のシャペロニンであるGroELのトリスバッファ溶液に加えるという極めて単純な手法により、バッファ水溶液中では不安定な硫化カドミウムナノクラスターをGroELが安定化できることを見いだした。さらに、サイズ排除クロマトグラフィーによる分析の結果、かなり安定な複合体が形成されていることが示唆された。光散乱測定および透過型電子顕微鏡による観察結果から、GroELが会合することなく、中央の空孔に取り込むことで硫化カドミウムナノクラスターを安定化していることが分かった。得られた複合体は熱的に安定であり、60度近くまで硫化カドミウムナノクラスター由来の蛍光を発し続けた。また、メチルビオロゲンを加えて蛍光の消光滴定を行なったところ、GroELが存在しない場合と比べ、15倍近くも消光されにくいことが分かった。このように、GroELに内包されている硫化カドミウムナノクラスターは、硫化カドミウムからメチルビオロゲンへの励起電子の移動が阻害され、電子的に外部の環境から遮断されていることが分かった。 さて、このようにGroELにより安定化されている硫化カドミウムナノクラスターであるが、複合体にMg-ATPを加えたところ、即座に沈殿が生じ、内包されていたナノクラスターが放出されることが分かった。この際、Mg^<2+>のみ、ATPのみでは全く変化を起こさず、Mg-ATPに対し、特異的に応答することが分かった。これは、細胞中で、変性タンパクのリフォールディングにはMg-ATPが必須であることと対応しており、Mg-ATPによる硫化カドミウムナノクラスターの放出が細胞内と同様の機構で進んでいることを示唆している。
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