2003 Fiscal Year Annual Research Report
シグマトロピー転位の不斉転写能を活用する効率的不斉合成法
Project/Area Number |
14550821
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中井 武 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (90016717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 英悦 新潟大学, 理学部, 助教授 (60201711)
岡村 睦雄 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (30215503)
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Keywords | シグマトロピー転位 / カルボアニオン転位 / Wittig転位 / Brook転位 / 不斉転写 / ボルネオール / カルベオール / ピテリトール |
Research Abstract |
研究室の立ち上げを完了した本年度にえられた主な研究成果は以下の通りである。 (1)「[2,3]-Wittig転位による不斉転写のメカニズム解明」に関しては、実験は完了し、不斉転写が動的速度論的光学分割機構で進行することを支持する結果をえたので、投稿準備を進めた。 (2)「[1,4]-Wittig転位の不斉転写能の評価」は昨年度に引き続き最も力を注いだテーマである。本年度は、アリルcis-/trnas-カルベニルエーテル(1)およびアリルcis-/trnas-ピペリチルエーテル(2)のカルボアニオン転位([2,3]-転位と競争する)におけるペリ選択性を調べ、(a)cis-1の転位では、trans-1に比べて、めずらしい[1,4]-Wittig転位(エノラート種を生成する)の比率が高い(60-90%)、(b)trans-2の転位でも[1,4]-転位が優先するのに対して、cis-2の転位では、[1,4]-転位が全く起こらず、[2,3]-転位が圧倒的に起こる、(c)いずれの系でも、[1,4]-転位は低温で、ほぼ完璧に立体保持で進行する、などの知見をえた。これらの結果から、基質の立体配座が[1,4]-転位率を決定する主要因であること、およびここで見られた[1,4]-転位は協奏(pericyclic)機構で進行すること、などを明らかにした。 次に、アリルendo-/exo-ボルニルエーテル(3)およびアリルendo-フェンチルエーテル(4)のカルボアニオン転位([1,2]-転位と競争する)における[1,4]-転位の可能性を検討した。その結果、3の転位では、[1,4]-転位が50%前後の比率で起こり、しかもそれは非立体特異的に進行するのに対して、同条件下で発生させた4のカルボアニオンは[1,4]-のみならず、[1,2]-転位も全く起こさないという"異常な"現象を見い出した。現在、この現象の原因を解明する実験を進めている。 さらに、本年度は、アリルシリルエーテル系のカルボアニオン転位のおける[1,4]-転位(retro-Brook転位)の可能性をも検討し、これまで知られていた[1,2]-retro-Brook転位は全く起こさず、[1,4]-retro-Brookのみを効率的に起こす3つの反応条件を見い出した。この手法は、新しい高立体選択的エノールシリルエーテルの合成法となるので、今後の発展が期待できる。 (3)「連続的シグマトロピー転位による不斉転写」については、引き続き連続的[2,3]-Wittig/[3,3]-siloxy-oxy-Cope転位を検討してきたが、不斉転写能を検討するには至っていない。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Takahiro Tomoyasu, Katsuhiko Tomooka, Takeshi Nakai: "Asymmetric synthesis of enantio-enriched acyclic α-amino alkylstanannes and rearrangement behavior od carbanions thereof"Tetrahedron Letters. Vol.44. 1239-1242 (2003)