Research Abstract |
1998年に高知県の極早生水稲品種とさぴかに発生した不時出穂の原因を明らかにするために,日長,播種量,育苗時の温度と施肥量,苗の種類,移植時期などと出穂との関係を検討した. 実験(1)全国各地から収集した48品種・系統から,播種後,日平均気温の積算値が1300℃までに出穂した19品種を選び,夏至近くの長日と秋分以降の短日条件下で,温度(昼/夜温:30/20℃,25/25℃)と窒素施肥量(ポット育苗箱の置床;3.0,1.5g/m^2)を異にして生育させた.その結果,主稈葉数が少なく,平均出葉温度の低い品種・系統ほど出穂が早く,一部の品種を除き,短日,25/25℃条件下で出穂は早まったが,窒素施肥量に対する反応はみられなかった.とさぴかでは,日長,温度条件を異にしても出穂関連形質の変動が小さく,日平均積算温度が1000℃以上に到達すると到穂する温度感応度の大きい品種であることが明らかとなった. 実験(2)苗の種類(乳苗,稚苗,中苗,ポット中苗)と移植時期を異にした場合のとさぴかの出穂特性を播種からの有効積算温度(基準温度:10℃,以下同じ)との関係で検討した.その結果,とさぴかでは,苗の種類移植,時期を異にしても有効積算温度が800℃日に達すれば到穂する品種であることが明らかとなった.また,育苗期の有効積算温度が250℃日以上であった箱育苗区では,500℃日前後で不時出穂が発生し,その後出現する正常穂の出穂が不揃いとなった. 実験(3)箱当たり播種量,基肥窒素施用量がとさぴかの幼穂の分化,発育程度および主稈出穂日に及ぼす影響について検討した.その結果,播種量が少なく,地上部乾物重が重く地上部乾物重/草丈比の高い苗において,幼穂の発育速度が早まる傾向がみられた.また,主稈葉数を多くして,主稈出穂を遅らせるには,基肥に窒素を2g施用し,播種量を多くして養成した苗を有効積算温度が200℃日までに移植する必要があると考えられた.
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