2003 Fiscal Year Annual Research Report
国産小麦の搗精法で得られる分級粉の酵素による製パン性改良に関する研究
Project/Area Number |
14560106
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Research Institution | OSAKA PREFECTURE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森田 尚文 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00094631)
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Keywords | 分級粉 / 製パン / 国産小麦 / 酵素分解 / ドウの物性 |
Research Abstract |
近年、我が国では食材の自給率の改善を目指し、農薬汚染の少ない国産小麦粉の調製の見直しと、食品材料の無駄をなくし、且つ安全で美味しさをもたらす効率的な加工技術の確立が求められている。本研究ではこれらの問題に対し改良型酒米用掲精機を用いて調製する分級小麦粉の製パン性について検討を行った。軟質小麦農林61号から分級精粒法により調製した分級小麦粉の製パンへの利用は、その単独使用では比容積の面からは不充分であることがわかった。そこで、分級粉を通常に製粉された農林61号(N61)に10%代替するとヘミセルラーゼとの併用により、製パン性はN61よりも明らかに改善された。また、代替量を増加した場合、最適水分量とペントサナーゼおよびセルラーゼの添加により、N61単独よりも顕著に老化抑制効果が認められた。ドウ中の澱粉粒子は伸展性のあるグルテン組織に囲まれ、発酵中の膨化も促進され、焼成後のパン中には充分な澱粉の糊化が観察された。さらに、これらの分級小麦粉と各種酵素との併用におけるドウの物性と最適製パン方法について検討した。製パンはAACC法に従つておこない、通常に製粉されたN61へ10%の分級粉A-2(90-80%分級層)、A-4(70-60%分級層)、A-7(40-30%分級層)を代替し、耐熱性変異型アルファーアミラーゼ(M111)、ノバミル(NM)とペントサナーゼ(PEN)を併用すると、パンの比容積、軟らかさは増加し、N61単独の場合よりもドウの物性と製パン性は改善された。さらに、M111、NM、PENの最適量はそれぞれ、100、50、25PPm(小麦粉重量ベース)であつた。さらに、耐熱性の異なる変異型アルファーアミラーゼ(21B、M77)、セルラーゼ(CEL)、フィターゼ(PHY)についても同様に検討した結果、その最適添加量は150、150、50、25PPmであった。特に21B、M77、CELはパンの比容積を増加させ、保存中のパンの老化を抑制したが、PHYにはその効果はみられなかった。しかし、PHYは小麦粉中の澱粉の糊化特性に影響を及ぼし、分級粉を代替したN61中の澱粉の最高粘度を他の酵素よりも増加させた。したがって、本来製パン性の低い軟質小麦から得られたN61は分級粉と各種酵素との併用添加により、N61の栄養価は高められより良好な製パン性が付与された。以上の結果より、これらの分級小麦粉は通常粉への一部代替と改良剤の添加ならびに調製方法の工夫により、最終製品の品質を改善し、優れた栄養価と新規なテクスチャーをもたらす新しい食品素材であり、多様な加工食品への実際利用が可能であると期待された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] N.Morita, et al.: "Textural properties and microscopic observation of noodle made from various novel wheat flours."Proceedings of the 53rd RACI Cereal Chemistry Division Conference, Adelaide, Australia. 53(未定). (2004)
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[Publications] T.Maeda, et al.: "Comparison of baking properties between polished wheat flours and commercial whole grain flours."Proceedings of the 53rd RACI Cereal Chemistry Division Conference, Adelaide, Australia. 53(未定). (2004)
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[Publications] W.Diana, et al.: "Effects of enzymes on bread qualities made from graded flours prepared by polishing wheat grains."Proceedings of the 12th Indonesian Scientific Meeting, Osaka, Japan. 12. 359-364 (2003)