2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14560114
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 耕平 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30272438)
|
Keywords | 遺伝的多様性 / ミトコンドリアDNA / 浸透交雑 / 祖先多型 / 隠蔽種 / オオオサムシ亜属 / ツンベルグナガゴミムシ / ルリクワガタ属 |
Research Abstract |
(1)地表徘徊性昆虫を対象とした近縁種群の系統性と遺伝的多様性の解析 昨年はオオオサムシ亜属の中で小型種の種間関係を解析し、祖先多型に由来すると考えられる遺伝的多様性を検出した。本年度は中型種で分布域も広いアオオサムシとミカワオサムシの長野県木曽谷における分布境界付近で形態解析とミトコンドリアDNA ND5領域の検討を行った。今回の解析では木曽谷において中間的個体群が存在することが明らかになったほか、さらにはミトコンドリアDNAが中間的個体群やアオオサムシにおいてもすべてミカワオサムシ由来と考えられるものに置き換わっていることが明らかになった。この現象は伊那谷でも認められており、同様な交雑帯の形成が隣接する2つの大きな谷で平行しておこったことや、前述の小型種群とは異なるミトコンドリアDNAの一方向への強い浸透が確認された。 さらに北日本のツンベルグナガゴミムシ種群の中に詳細な交尾器形態とミトコンドリアDNAから識別される同所的な隠蔽種が複数存在することが明らかになった。このことは従来の外見上の形態による分類だけでは種多様性レベルでも見損なう可能性を示唆し、遺伝子解析の有効性を示した画期的な例である。 (2)植食性昆虫を対象とした近縁種群の系統性と遺伝的多様性の解析 昨年解析した森林被害の大きい中国のゴマダラカミキリ類と対照的に、飛翔能力を持つものの、比較的高標高の地を好み、地域的に変異が認められるとされるルリクワガタ属4種を取り上げ、遺伝的な変異を検討した。これら4種は以前には区別されていなかった時期もあり、形態的には非常に似通っている。2種または3種が同所的に分布する地域も広範囲に及ぶが幼虫が穿入する材の質が著しく違うことや新芽を食害する習性にも差が認められる。サンプルの収集、適合するプライマーの選定に手間取り、報告段階でミトコンドリアDNA COI領域について4種11頭の解読を終わった段階であるが、同一地点の同種にも個体変異があることや2種については明らかに単系統にならず、交雑か祖先多型の可能性を示唆する結果となっている。
|