2002 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な森林経営における環境会計の可能性に関する研究
Project/Area Number |
14560119
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
植木 達人 信州大学, 農学部, 助教授 (90221100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 正人 信州大学, 農学部, 助教授 (40345757)
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Keywords | 森林経営 / 森林施業 / 森林環境会計 / FSC / ISO14000 |
Research Abstract |
今日、森林管理においては環境と調和した持続的な森林経営が世界的に注目されている。この意義は木材生産と環境との調和にあり、それを具体化するものとしてFSC(森林管理協会)、ISO14000などがある。FSC、ISO14000などは徐々に広がりを見せつつあるが、世界的にはわずかの面積にとどまり、今日、持続可能な森林経営の定着にはなお程遠いものがある。一般的に、経済活動における環境規制はコストアップにつながり、経済活動の停滞とみられることが多い。林業においても同様で、これが持続的な森林経営推進の大きな制約になっている。 持続可能な森林経営は、森林生産量(木材やキノコなどの特用林産物、果実や野生鳥獣等々)と森林の公益および機能を恒常的に向上させることが基本である。そのため、FSCやISO14000などの認証が導入されれば、森林の環境経営が目指されることになるが、これらはあくまで森林経営の原則と基準であり、多くの指標は定性的である。したがって森林環境経営を客観的に評価するため環境会計の導入が必要となる。この際の森林環境会計の基本構成は以下のように考える。1.費用構成1)基本費用:一般森林経営の費用、2)環境費用:森林の環境・公益的機能を高めるために実施された個別作業(例えば間伐)や森林整備などの費用 2.効果構成1)直接効果:一般森林経営により獲得された木材や林産物の算出効果、2)間接効果:主に森林の環境・公益的効果をさす ここで特に問題になるのは、定量的計算が困難であるか、未だ研究成果が十分とはいえない間接効果(例えば生物多様性や自然遺産、炭素固定量や水源涵養、酸素生産量や土砂流出防止機能などなど)をどのように客観的に示すかという点である。これまでもいくつかの手法が検討されてきた。代表的な手法は、(1)代替法、(2)CVM法、(3)ヘドニックアプローチ法、(4)トラベルコスト法などであるが、間接効果の評価については議論すべき点が多い。 また現実の具体的個別林分の環境費用と間接効果をどのようにとらえるかという問題は、その林分構造および施業歴との関係で重要な検討課題である。今回、3カ所の択伐作業の具体的林分の基本調査を実施した。調査箇所は石川県珠洲市、愛媛県久万町、岐阜県今須である。珠洲市の択伐作業は4代(130年)にわたる択伐林、久万田下の択伐作業は3代(100年)にわたる択伐林、今須では択伐の歴史は古いが施業の停滞による一斉林化が進行しつつある。こうした歴史的経緯に基づく現実林分にたいし、いかに森林環境経営を評価し、具体的な森林環境会計の枠組みを構築するかは、今後の検討課題である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 何, 魚住, 植木, 加藤ほか: "森林環境会計の可能性に関する検討"日本林学会中部支部大会研究発表会講演要旨集. No.51. 16 (2002)
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[Publications] 平山, 植木, 富岡, 井戸田: "能登地方におけるアテ択伐林作業の林分構造の分析"日本林学会大会学術講演集. 113. 96 (2002)
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[Publications] 平山, 植木, 井戸田: "愛媛県久万地方における択伐作業及びその地域的条件に関する分析"日本林学会中部支部大会研究発表会講演要旨集. No.51. 17 (2002)