2004 Fiscal Year Annual Research Report
海洋動物プランクトン、特にカイアシ類の寄生生物の分類・生態に関する研究
Project/Area Number |
14560151
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大塚 攻 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (00176934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀口 健雄 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20212201)
洲崎 敏伸 神戸大学, 理学部, 助教授 (00187692)
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Keywords | 動物プランクトン / カイアシ類 / 寄生生物 / アミ類 / 隔口類繊毛虫 / Vampyrophrya pelagica / 端脚類 / エロビオプシス類 |
Research Abstract |
瀬戸内海およびその他の海域で、動物プランクトンの寄生生物の分類・生態に関する以下の新知見を得た。 1)瀬戸内海産の浮遊性カイアシ類に寄生する隔口類繊毛虫Vampyrophrya pelagicaの各ステージ滞留時間と水温との関連を室内実験によって調査した。phorontからtrophontへのハッチは水温の影響をほとんど受けないが、trophont、tomontの滞留時間は水温の低下とともに長くなった。瀬戸内海の最低、最高水温に相当する10℃、25℃での結果を比較するとそれぞれのステージ滞留時間は15倍、18倍も長くなる。したがって、低水温期にはtomiteの産出がほとんどないものと椎定された。 2)瀬戸内海に加え、有明海湾奥部でも様々な浮遊性カイアシ類の体表に隔口類繊毛虫のphorontの付着を確認したが、島根県神西湖などの汽水域では全く付着が見られなかった。有明海においても宿主特異性が顕著であり、Paracalanus spp.には高頻度で付着が見られたが、Oithona spp.およびMicrosetella norvegicaではほとんど付着が見られなかった。これは瀬戸内海での結果と一致している。さらに、インド洋の沿岸域、東シナ海、スールー海の深海域でも隔口類のphorontと考えられるものが浮遊性カイアシ類の体表や付属肢に付着しており、地球の海洋全域でこの繊毛虫の生態的機能を再評価する必要があることを指摘した。 3)瀬戸内海産アミ類Siriella okadaiの育房内には等脚類Prodajus curviadominalisとカイアシ類Nicothoidaeに属する未記載種が寄生するが、両種の季節的出現パターンは顕著に異なっていた.2003年6月〜2004年5月の調査においては、等脚類は8〜11月、カイアシ類は1〜8月に出現し、それぞれ寄生率の最高は19、11%であった。アミ類の育房内のスペースと卵をめぐっての寄生虫間の競争と考えられる現象が確認された。 4)黒潮流域に生息するクラゲノミ亜目端脚類Scina vosseleriの育房内にエロビオプシス類Thalassomyces marsupiiが寄生していた。本種は11本初記録であった。また、これまで本種は13種のヨコエビ亜目、クラゲノミ亜目端脚類からの報告があったが、S.vosseleriからは初記録であった。
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Research Products
(11 results)