2002 Fiscal Year Annual Research Report
淡水産および海産サメ類ミオシンの構造比較による尿素抵抗性機構の解明
Project/Area Number |
14560171
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
加納 哲 三重大学, 生物資源学部, 教授 (80177550)
|
Keywords | 海産サメ類 / 尿素抵抗性 / 淡水エイ / ドチザメ / ミオシン / アミノ酸配列 / cDNAクローニング / 分子機構 |
Research Abstract |
海産サメ類はタンパク質変性である尿素を体内に0.3M含有しているにもかかわらず,硬骨魚類と同等の生命活動を維持することができる。これは海産サメ類が尿素抵抗性の機構を有しているからとされる。本研究は,同じサメ類であるが体内に尿素を含有していないために,尿素抵抗性を示さないと推測される淡水エイPotam otrygon histrixに着目し尿素抵抗性の分子機構の解明を試みた。 淡水エイおよびドチザメの血中尿素濃度はそれぞれ,0.225mMおよび324mMと測定された。また,淡水エイ,ドチザメおよびコイの各筋原線維の0-2.0M尿素存在下におけるMg^<2+>-ATPase活性を調べた結果,淡水エイのそれは,0-0.5Mでは尿素の影響をほとんど受けず,それ以上の尿素濃度で濃度の上昇に伴って漸次低下し,2Mで20%に達した。一方,ドチザメのそれは生理条件下である0.3M尿素で150%の最大活性に達し,2Mでも30%の活性を維持した。またコイでは尿素が微量に存在するだけで失活が始まり,1Mでほぼ完全に失活した。従って,淡水エイ筋原線維の尿素抵抗性はコイよりはかなり高いものの,ドチザメよりは明らかに低いことが示された。 淡水エイ骨格筋ミオシンのcDNAクローニングにより1788アミノ酸残基の配列が決定された。この情報からミオシン重鎖S1領域の必須軽鎖結合領域内にある,N末端側から785-793残基は,両サメ類のみが硬骨魚類に比べ強い親水性を示し,逆に同領域内の797-799残基は,両サメ類のみが強い疎水性を示した。また,S1領域のATPおよびアクチン結合部位近傍の685-693残基は,淡水エイがドチザメと硬骨魚類の中間を示す傾向にあった。これらの領域はATPase活性ドメインに近く,尿素抵抗性との関連性が示唆された。ここで得られた結果は海産サメ類の尿素抵抗性の分子機構の一端を解明するものである。
|
Research Products
(2 results)