2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14560184
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野田 公夫 京都大学, 農学研究科, 教授 (30156202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 芳宏 京都大学, 農学研究科, 助教授 (40283650)
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Keywords | 農業・農村組織化 / 自治村落 / 地縁的結合 / 分散零細錯圃制 / 日本型構造政策 / 中耕除草農業地帯類型 / 農業近代化の日本的形態 |
Research Abstract |
本年の研究から得られた知見は以下のようなものである。 (1)大正期には農業の不利化や農村の立ち遅れが問題になるが、農業・農村側対抗運動は「分配の是正を要求する小作争議」「パイ自体を増大させる農家小組合運動」「生産基盤である土地の確保をめざす土地管理組合運動」等として現出した。(2)これらに共通する特色は、組織の立ち上げにも運動化にも制度化にも、「むら」の規範と結合力が積極的に活用されたことである。(3)これまで両者を対立的にとらえる見解が強かったが政治主義的な謬論である。大正という時代の特色は、「小作争議による分配関係の是正」のみならず「農家小組合運動によるパイ自体の増大」が、農業と農民にとって現実的な改革方向になりえたことである。 なお、他に二人の論者が「組織化」という言葉を類似の文脈で使っている。一人は、朴ソプ「動員と開発:20世紀の東アジア」(京都大学経済学会『経済論叢』第168巻第5・6号、2001年10月)であり、東アジアにおいて政府・官僚主導の農業開発が実効を収めえた共通の基盤が「農村の組織化」であったとし、その基礎単位としての部落に注目している。もう一人は勝部眞人『明治農政と技術革新』(吉川弘文館、2002年)であり明治農政の基本的性格とそれ以降の一貫した政策基調として「小農組織化政策」があったとしている。私は「組織化」を、農業近代化の日本的形態を示す用語として用いているが勝部の場合は没歴史的である。また私は「組織化」の基礎に「むら」の地縁的結合力をみているが、朴の場合はその点の吟味を欠いている。 以上の中間的成果として、別記「農業近代化過程の日本的特質」としてとりまとめた。最終年度には、上述の「組織化」をめぐる理解の差・論点の差をも整理しつつ、議論を集約したい。
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Research Products
(1 results)