2003 Fiscal Year Annual Research Report
戦後東ドイツにおける農業集団化と村落構造の変化に関する実証的研究
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14560186
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 芳宏 京都大学, 農学研究科, 助教授 (40283650)
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Keywords | 農業集団化 / 東ドイツ / 土地改革 / 農地改革 / 戦後社会主義 / 農村史 / 社会史 / 戦後ドイツ史 |
Research Abstract |
本研究では、メクレンブルク・フォアポンメルン州を対象地域として、戦後の東ドイツにおける農業集団化過程の全体像を、村落構造の変化との関わりで実証的に明らかにすることを目的としている。 本年は、とくにミクロヒストリー的手法を意識し、対象地域をRostock県Bad Doberan郡に絞った史料調査を行った。とくに当郡の郡文書館に所蔵されていた郡内28集落のLPG文書が有用であった。またLandesarchiv Greifswaldに所蔵されていた当郡の郡行政文書と党関連文書の調査もあわせて行った。集めた資料類は膨大であり、今後なお詳細な分析をする必要があるが、現時点での新たな知見は以下の通りである。 最大の成果は、1950年代における集団化のありようが予想以上に多様であったことである。そしてこれらは、新旧農民村落別という基準と1953年6月17日事件の作用の仕方という基準により、ほぼ4つの類型に分類することができる。簡単に言えば、新農民村落については、「6月事件」の作用を基準に「解散型」と「継続型」の二つが見いだされ、旧農民村落のLPGは、「逃亡・追放」大農経営を母体とする「旧農民村落型」と、1955年中央の政策的指導により耕作放棄地を管理するOLB経営を母体とする「集落経営転化型(以下OLB転化型)」の二つが見いだされた。 いずれにせよ、こうした多様性は、集団化を志向する強力な国家の介入にもかかわらず、集団化の進展が、各村の村内の事情、各集落の農民のふるまい方によってある程度規定されていたことを示している。集団化の多様性を生むような各村落のあり方、各農民の態度とは何だったのか。この問いに対する解答を、今後、収集資料のより深い分析をとおして明らかにしていきたい。 なお、今回の研究成果の一端は、2003年9月23日に慶応大学経済学部にて開催されたドイツ現代史学会研究シンポジウムにて、シンポ報告として公表したことを付言しておく。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 足立芳宏: "戦後東ドイツ農村の難民女性問題-メクレンブルク-フォアポンメルン州を中心に-"社会科学(同志社大学人文科学研究所編). 第72号. 173-198 (2004)
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[Publications] 足立芳宏: "戦後東ドイツ土地改革期の新農民問題と村落-メクレンプルク-フォアポンメルン州を中心に-"経済史再考(徳永光俊・本田三郎編、思文閣出版社). (所収). 569-593 (2003)