2003 Fiscal Year Annual Research Report
高塩分濃度・嫌気土壌に適応したマングローブ体内におけるガス拡散・輸送機構の解明
Project/Area Number |
14560219
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
北宅 善昭 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 助教授 (60169886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 俊夫 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 助手 (50316014)
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Keywords | マングローブ / 胚軸 / ガス拡散 / 光合成 / 葉面コンダクタンス / 酸素 / 沿岸域生態系 / オヒルギ |
Research Abstract |
マングローブ林の修復は沿岸域生態系を保全するための重要な課題である.マングローブ林修復のための植林を効率的に行うためには,実生苗定植後の生存率を高める必要がある.マングローブ実生は嫌気状態に近い土壌に生育し,根の呼吸に必要なO_2は実生胚軸部(以下,胚軸)から供給されることが考えられる. 本研究では、まず,光強度,水位の変化に伴う胚軸および根内O_2濃度の変動を調べた.その結果、根内O_2濃度は胚軸内O_2濃度変動に追随して変動した,自生地において,根内O_2濃度は胚軸内O_2濃度より2.0%〜8.2%低かった.制御室において,胚軸水没処理によってO_2濃度は胚軸で処理前17.2%から処理後7.9%に,根で11.0%から3.0%に低下した.胚軸水没時の遮光処理によってO_2濃度は胚軸で処理前7.9%から処理後3.7%に,根で3.0%から2.4%に低下した.PPFD450μmol m^<-2>s^<-1>における胚軸の総光合成速度は0.60μmol m^<-2>s^<-1>であり,オヒルギ実生胚軸では光合成が行われていることが実証された.次に、自生地においてオヒルギ実生胚軸のガス交換機能を抑制するため,胚軸表面をシリコン充填剤で被覆し,アルミフォイルで遮光した(以下,処理区).その結果、シリコン充填剤による胚軸の被覆および遮光処理によって,O_2濃度は胚軸で処理前14.0%から処理後10.1%に,根で9.6%から3.9%に低下した.PPFD100〜500μmol m^<-2>s^<-1>の範囲での平均葉面コンダクタンスは,処理前0.33cm s^<-1>から処理1日後0.23cm s^<-1>に低下した.60日後,処理区の全ての植物体が枯死した.無処理区では全て生存していた. 以上、酸素濃度の勾配に従って胚軸から根へと酸素が拡散していた.胚軸露出時は大気からの拡散によって,日中の胚軸水没時は胚軸での光合成反応によってO_2が胚軸内に供給されると考えられる.従ってマングローブの植林地としては胚軸が長時間水没せず,光が十分に当たる場所が望ましい.胚軸表面への藻類やフジツボ等の動物の付着は胚軸および根内のO_2濃度を低下させ,マングローブ実生の活性および生存率を低下させることが考えられるので,それらの付着を防止することが重要である.
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