2003 Fiscal Year Annual Research Report
耐凍性を決定している遺伝子の人為的発現による脊椎動物の卵子と胚の凍結保存の試み
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14560235
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
枝重 圭祐 高知大学, 農学部, 助教授 (30175228)
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Keywords | 耐凍性 / 水透過性 / 耐凍剤透過性 / 水チャンネル / アクアポリン |
Research Abstract |
平成15年度は、脊椎動物の資源の保存や増殖のため、以下のような研究を試みた。 (1)水/耐凍剤チャンネルであるアクアポリン(以下AQP)3のcRNAをブタ卵核胞期卵子に注入して培養して発現させ、耐凍性の向上を試みた。注入量を1-10pgまで変異させ、注入時期を回収直後から12時間培養後まで変異させたが、注入後24時間目から卵子が死滅をはじめ、正常に成熟した卵子が一つも得られなかった。ブタ卵子に発現させるには、さらなる研究が必要である。 (2)メダカおよびゼブラフィッシュの初期胚および排卵数時間前の卵子にAQP3のcRNAを注入し、3-8時間後の水透過性および耐凍剤透過性を調べた。メダカおよびゼブラフィッシュのいずれにおいても、未処理の初期胚も卵子も水および耐凍剤透過性は著しく低かったが、AQP3のcRNAを注入した場合では、いずれも水及び耐凍剤の透過性が上昇した。しかしながら、凍結保存が可能な正常マウス卵子よりも低かった。これらの魚類の卵子や胚は、マウス卵子より体積が約1000倍大きいことから、凍結保存を可能にするには透過性の向上は不十分と考えられた。 (3)マウス卵核胞期卵子に約5pg程度の微量のAQP3のcRNAを注入することによって、卵子の成熟を妨げることなく、通常の卵子ではガラス化凍結保存に使えないグリセロールをベースにした保存液で凍結保存が可能になることを確認した。さらに、融解後の卵子を体外受精に供すると拡大胚盤胞期にまで発育し、それを受卵雌に移植すると一部は産仔にまで発育することがわかった。また、産仔は正常に発育し、繁殖能力もあることを確認した。 以上のように、水/耐凍剤チャンネルを人為的に発現させることにより、マウスやメダカやゼブラフィッシュの卵子や胚の水および耐凍剤の透過性の向上が可能であることがわかった。マウスでは耐凍性が向上し、受精後の発生に影響を与えないこともわかった。しかし、魚類の卵子や胚では、水および耐凍剤の透過性の向上が不十分で、チャンネルの発現を高めるためにさらなる研究が必要である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] K.Edashige, Y.Yamaji, F.W.Kleinhans, M.Kasai: "Artificial Expression of Aquaporin-3 Improves the Survival of Mouse Oocytes after Cryopreservation."Biology of Reproduction. 68:1. 87-94 (2003)