2002 Fiscal Year Annual Research Report
鶏精子の先体反応及び運動調節におけるシグナル伝達機構に関する研究
Project/Area Number |
14560236
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
芦沢 幸二 宮崎大学, 農学部, 教授 (60128353)
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Keywords | 精子 / 鞭毛運動 / 先体反応 / 運動調節 / リン酸化 / 脱リン酸化 / 細胞内情報伝達 / カルパイン |
Research Abstract |
精子は高度に分化した細胞で、父親のゲノムを運搬して卵細胞と受精させるために特殊化している。精子頭部にはゲノムを含む核と、それを包む先体、尾部には運動器官である鞭毛がある。精子の運動は精子と卵細胞の融合にとって欠かせない要因である。哺乳動物の精子において受精能獲得と先体反応を調節している要因の中心となっているのは、細胞内Ca^<2+>である。例えば、受精能を獲得した哺乳動物精子は、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇によって先体反応が引き起こされることが知られている。カルパインは、Ca^<2+>によって活性化されるカルシウム依存性プロテアーゼで、細胞の融合などを含む特異的なCa^<2+>+依存的な反応を仲介すると考えられている。精子の運動や先体反応の調節にカルパインが何らかの影響を及ぼしていると考えられてきているが、鶏精子においては全く明らかにされていない。そこで本実験では、カルパイン阻害剤であるPD-150606を用いて、鶏精子の運動性と先体反応に及ぼす影響を検討した。 40℃において不動化をおこしている精子にCa^<2+>を添加すると、運動性回復効果が見られた。一方、カルパイン阻害剤であるPD-150606を添加すると、Ca^<2+>無添加区では精子の運動促進効果はみられなかった。また、Ca^<2+>+存在下において回復する運動性は、PD-150606を添加することで抑制された。これに対して、IPVL存在下においてCa^<2+>+を加えると、PD-150606の有無にかかわらず先体反応は抑制されなかった。 以上の結果から、ヒアルロン酸とカルパインは鶏精子の機能に対して異なる作用のあることが示唆された。すなわち、ヒアルロン酸は運動調節に関与しないが先体反応に関係しているのに対して、カルパインは運動の維持には不可欠であるものの、先体反応には深く関与しないものと推察された。その作用部位は、軸糸あるいはそれに付随している細胞骨格系ではなく、細胞膜あるいは細胞質と推測された。
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