2002 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠維持における卵胞ホルモンとTGF-αの生理的役割
Project/Area Number |
14560269
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
玉田 尋通 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 助教授 (10155252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川手 憲俊 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 講師 (80221901)
澤田 勉 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60081600)
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Keywords | 卵胞ホルモン / 妊娠 / 子宮 / 胎子 / アロマターゼ阻害剤 |
Research Abstract |
家畜を繁殖させるには妊娠の成立と維持が必須である。本研究は、妊娠維持における卵胞ホルモンとTGF-αの生理的役割を解明し、家畜の妊娠率向上に寄与することを目的として行っている。 本年度は、卵胞ホルモン合成阻害剤であるファドロゾールを妊娠期のラットに投与し、ファドロゾールが血中ステロイドホルモン濃度と胎子ならびに子宮に及ぼす影響について検討した。妊娠後期のラットに、ミニオスモッティックポンプを用いて、ファドロゾール塩酸塩を一日に300μgの割合で持続的に皮下投与すると、溶媒のみを投与した対照群と比べて、血中の代表的卵胞ホルモンであるエストラジオール濃度は約半分に減少し、卵胞ホルモンの前躯体であるテストステロン及びアンドロステンジオン濃度は約2倍に増加した。また、両群間で血中黄体ホルモン濃度に差はなかった。この結果より、ファドロゾールの持続的処置は妊娠維持に必須のホルモンである黄体ホルモンには影響を及ぼさず、卵胞ホルモン合成酵素(アロマターゼ)活性を抑制して卵胞ホルモンの産生を抑制することが明らかになった。このファドロゾール処置により、胎子や胎盤の重量への影響は認められなかったが、子宮内圧は約4倍に増加し、23%の胎子に異常(頭部や臀部の血腫)が認められた。また、子宮の圧力-容積関係を子宮平滑筋の活動を抑制した状態で測定したところ、ファドロゾール処置により、子宮組織の枠組みの容積が小さくなり、子宮の伸張性が減少していることが明らかになった。さらに、ファドロゾール処置に卵胞ホルモンの投与を加えると、ファドロゾール処置によってもたらされた子宮や胎子の変化が修復された。 これらの結果より、卵胞ホルモンの妊娠後期における特異的役割が明らかになった。すなわち、卵胞ホルモンは、子宮組織の枠組みや伸張性の発達に寄与し、急速に発育する胎子に適した物理的環境を維持しているものと考えられる。
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