2002 Fiscal Year Annual Research Report
野生動物および動物園動物の保護増殖計画上問題になる寄生線虫症に関する疫学的研究
Project/Area Number |
14560271
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
浅川 満彦 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (30184138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷山 弘行 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (90133800)
辻 正義 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (10150088)
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Keywords | 野生鳥類 / 動物園展示動物 / 寄生線虫相 / ペットサル類 / 外来ゲッ歯類 / 生物地理 / 野生動物医学 / 専門職大学院構想 |
Research Abstract |
陸棲脊椎動物、野生鳥類、あるいは動物園展示のみならず特用家畜として飼育されるダチョウについて、これらの保護・衛生に関わる感染症全般の文献的調査を行い、総説論文をまとめた[1,10,図書2]。特に、鳥類についての情報は極めて限られており、研究者・動物園関係者のみならず、環境行政に携わるものからも別刷り請求が来た。研究面としては、これら総説により、野生動物および動物園動物の寄生線虫症の問題点を、序列化して明確にすることが可能になった。英語で書かれた二件[1,図書2]については、結果的に日本独特の生物地理学的特色を有する寄生線虫相を、諸外国研究者に知らしめることになったため、関連分野の活性化に計り知れない貢献をした。新たな寄生線虫相のフィールド調査結果として、これまで未知であったトカラ列島口之島産アカネズミと佐渡産サドモグラについて明らかにし、特に日本産Tricholinstowia talpaeの形態学的な新知見を加えることができた[2,6]。また、カムチャッカ半島や佐渡産タヌキについては、その寄生線虫相を生態学的および生物地理学的に解析し[4,17]、これら島嶼における独特の種構成について論じた。生態系に直接悪影響を与える外来種問題についても、寄生線虫の側面から関与し、特にタイワンリスおよびヌートリアの糞線虫類の存在を初めて確認した[7,図書1]。これら外来ゲッ歯類の病原体のキャリアの可能性については、危惧されていたが、これまで実際に検出されたことが無く、非常に重要な調査結果となった。サル類については、ペットサル類や動物園展示動物(キンシコウ)について疫学あるいは分類学的調査を行い[3,9]、一新種を含む多数の日本新記録種を確認した。中には、原産地で病原性の高い属種も含まれ、野生動物医学的に注目された。地元の自然史としての寄生線虫相の記載として、野幌森林公園における調査研究を継続しているが、今年度は、コテングコウモリとエゾアカガエルについて記録した[5,8]。国内外における関連分野の情報の記事も作成し[18〜21]、専門職大学院構想を含む後進の育成や野生動物医学教育に寄与した。なお、寄生線虫調査の際、いくつかの他の病原生物も発見され[11〜15]、多くは公衆衛生学および動物衛生学的に貢献した。 注:[]は11.研究発表の番号を示す
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Research Products
(22 results)
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[Publications] Asakawa, M: "An Overview biology of the Japanese avifauna"Journal of Yamashina Institute for Ornithology. 34. 200-221 (2002)
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[Publications] 坂田金正: "トカラ列島口之島および中之島産アカネズミApodemus speciousus (Temminck)の消化管から得られた寄生蠕虫類の種構成の特色"沖縄生物学会誌. 41(印刷中). (2003)
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[Publications] 横山祐子: "我国に輸入された愛玩用サル類の寄生蠕虫類保有状況(予報)"野生動物医学会雑誌. 8(2)(印刷中). (2003)
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[Publications] 的場洋平: "新潟県佐渡島産タヌキの内部寄生蠕虫相"日本生物地理学会報. 57. 31-36 (2002)
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[Publications] 浅川満彦: "野幌森林公園における寄生虫相の研究-コテングコウモリ"野幌研究. 2. 28-30 (2003)
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[Publications] 坂田金正: "サドモグラ(Mogera tokudae)の寄生線虫態"酪農学園大学紀要、自然科学. 27(2)(印刷中). (2003)
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[Publications] Nakamura, S: "New host records of arthropod parasites from sea birds in Hokkaid, Japan"Jpn. J. Zoo Wildl. Med.. 8(2)(印刷中). (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "ヌートリアにおける肝蛭寄生とその食品衛生に与える影響"食品衛生研究. 53(3). (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "渡り鳥の感染症-マレック病感染マガン発見を機に考える"日本獣医師会雑誌. 55. 264-265 (2002)
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[Publications] 浅川満彦: "ロシア・カムチャッカ半島におけるガン類の野生動物医学調査-生態学と獣医学の接点の一事例として"JVM. 56. 62-67 (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "応用動物学と獣医学との連繋による専門職大学院構想-英国野生動物医学MScコースと一例にして"畜産の研究. 56. 779-784 (2002)
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[Publications] 浅川満彦: "シンポジウム「動物園の生物学:動物園動物を研究対象にするためには」に参加して"Zoo and Wlidlife News(日本野生動物医学会). 14. 9-11 (2002)
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[Publications] 浅川満彦: "第8回国際学会「齧歯類とその生息域」-会議に参加して"Zoo and Wlidlife News(日本野生動物医学会). 15. 18-20 (2002)
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[Publications] 浅川満彦: "米国フロリダにて開催された動物園動物および野生動物関連獣医師会合同大会"獣医畜産新報. 55. 105-108 (2002)
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[Publications] 松立大史: "我が国に定着した外来齧歯類(タイワンリスCallosciurus erythraeusおよびヌートリアMyocastor coypus)の寄生蠕虫類に関する調査"野幌動物医学会雑誌. 8(2)(印刷中). (2003)
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[Publications] 浅川満彦: "野幌森林公園における寄生虫相の研究-エゾアカガエル編"野幌研究. 1. 31-36 (2002)
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[Publications] Hasegawa, H: "Enterobius (Colobenterobius) pygathrichus sp. n. (Nematoda : Oxyuridae) collected from a golden monkey, Pygathrix roxellana (Milne-Edwards, 1870)"Comparative Parasitology. 69. 62-65 (2002)
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[Publications] 浅川満彦: "走鳥類の寄生虫病学概論"日本ダチョウ・走鳥類研究会誌. 3(印刷中). (2003)
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[Publications] Asakawa, M: "Arostrilepis Horrida (Linstow, 1901)(Cestoda, Hymenoloepididae) from Eothenomys spp. (Rodentia) in Japan"Biogeography. 4. 51-55 (2002)
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[Publications] 的場洋平: "外来種アライグマ(Procyon lotor)からのコクシジウム類Eimeria属およびIsospora属の初確認とトキソプラズマ抗体の保有状況"野生動物医学会誌. 7(1). 87-90 (2002)
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[Publications] 浅川満彦: "外来種ハンドブック(日本生態学会編)輸入ペットの寄生蠕虫類-宿主-寄生体関係の近郊を乱すエイリアン"他人書館. 376 (2002)
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[Publications] Hasegawa, H: "Parasitic helminth fauna of terrestrial vertebrates in Japan"Meguro Parasitological Museum, Tokyo(印刷中). (2003)