2002 Fiscal Year Annual Research Report
輸入爬虫類における外来感染症の疫学および病理学的研究
Project/Area Number |
14560275
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
宇根 ユミ 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (40160303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 靖夫 麻布大学, 獣医学部, 教授 (40063961)
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Keywords | クリプトスポリジウム / トカゲ |
Research Abstract |
本研究は、近年、輸入数および飼育数が増加の一途を辿る愛玩用爬虫類を対象として、日本に輸入される爬虫類にはどのような疾患が存在かつ流行しているのか、その病理像を明らかにするとともに、感染様式、病原性、診断法を検討することを目的として実施された。平成14年度は、クリプトスポリジウム感染症について、1)発生状況:動物園などの展示施設、臨床獣医師、輸入業者などを対象として、感染率と宿主域を調査した。2)病理組織像:各施設より提供された斃死あるいは発症例を病理学的に検索した。3)診断法:糞、腸内容、生材料・ホルマリン固定材料それぞれに対して有用な検査法を検討した。4)感染様式と病原性:各種の爬虫類を用いて感染実験をおこなった。これらの研究によって明らかになった内容を、第135回日本獣医学会(2002.9)ワークショップと第8回日本野生動物医学会(2002.9)に報告した。さらに、野生動物医学会誌、Vol.8,No.1(2003)に投稿した。その内容は以下の通りである。発生状況:糞便検査により6つの国内施設における保有率は143検体中7種37が陽性(26%)で、施設別陽性率は0〜67%であった。経過としては、新規個体を導入後、以前から飼育している個体を含めて発症をみることが多い。経過は比較的長く、数ヶ月にわたり、吐き戻し・下痢を反復、進行性に削痩し、死に至るが、いくつかの種類で回復例があった。病理学的所見:様々な程度の削痩があり、腸管に多量の粘液性の内容を含むものが多い。上皮の孤在性壊死やリンパ球浸潤を伴う過形成性腸炎があり、原虫は主として小腸の上皮自由縁に観察された。診断法;C.parvam用の診断抗体と交差性があり、免疫組織診断が可能であった。分子生物学的に検索により、1施設の原虫のDNAシークエンスが、サバクオオトカゲで確認されているCryptosporidium CSP06と100%一致し、異なる3つの由来のトカゲの腸から得られた原虫のそれがC.saurophilumと99%以上の一致した。感染様式と病原性:経口接種で11種中5種に感染が成立した。研究によって、近年USAで問題となっていたヒョウモントカゲモドキのクリプトスポリジウム症の日本への侵入が初めて確認された。国内施設においても、高率にクリプトスポリジウム感染が起きており、宿主域も予想以上に広域であることがわかった。
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