核膜孔複合体における核と細胞質間の輸送選別機構:形態学からのアプローチ

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14570012
• Research Institution: Tottori University
• Principal Investigator: 名黒 知徳 鳥取大学, 医学部, 助教授 (50032230)
• Keywords: 核膜 / 核膜孔複合体 / 微細構造 / 走査電顕 / 核膜孔 / 三次元構造

Research Abstract

平成14年度は核質と細胞質間の輸送選別機構解明の基盤となる核膜孔複合体の三次元微細構造を超高分解能走査型電子顕微鏡により捉えることを目標に研究を遂行した。
1、現在までに、固定液の濃度と凍結割断時の不凍液の濃度を調整することで、ラットの膵臓外分泌細胞における外核膜真表面の細胞質面と核周囲腔面、外核膜半膜のP面とE面、内核膜真表面の核質面と核周囲腔面、内核膜半膜のP面とE面、全てを露出することが出来るようになった。
2、これにより、核膜と核膜孔複合体の詳細な位置関係を知ることが可能となった。核膜孔複合体の内で細胞質側に位置する比較的大きな8個の粒子は、0.1%オスミウムの浸軟処理により容易に溶出すること、および、溶出した後の外核膜細胞側表面には粒子の収まっていた穴などの構造は観察されず平坦であることから、8個の粒子は核膜上に接しているだけで、核膜との密接な結合はないことが判明した。
3、また、従来、透過電子顕微鏡による超薄切片像においてDiaphragmaとして記載されてきた核膜孔の中心部領域では、核膜孔内部に位置する構造蛋白が膜を貫いて核周囲腔に位置する構造蛋白と連結し、外径直径90nm、内径直径約10〜20nmのリング状構造を形成していること、内径の大きさは核から細胞質に向かうに従って狭くなっており、核膜孔複合体のなかで核膜孔の最も狭いゲートGateを形成していることが明らかとなった。
4、このリング状構造のほとんどは外核膜の核周囲腔面に観察され、内核膜の核周囲腔面では希にしか観察されないことから、リング状構造蛋白は外核膜よりも内核膜表面により強い結合があると思われる。核周囲腔に位置する構造蛋白と核膜孔内部に位置する構造蛋白は、互いに分離することなく常に一緒に結合して同じ大きさのリング状構造を示すことから、膜を介する両者の結合はたいへん強固であることが明らかとなった。