2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14570028
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今西 宣晶 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (00184820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 英雄 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (50129558)
相磯 貞和 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60138013)
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Keywords | 皮膚 / 皮下組織 / 血管解剖 / 動脈 / 静脈 / 3次元 / 血管造影 / 皮弁 |
Research Abstract |
ヒトの皮膚皮下組織内での動脈(血液供給路)および静脈(血液環流路)の走行経路および動静脈相互の位置的関係を3次元的に解明し、皮弁作成の際の解剖学的根拠を形成外科に提供することを目的とする。形成外科領域においては、腹直筋皮弁という皮弁が代表的な皮弁の一つである。この方法が開発された頃は、皮膚皮下組織を一塊として用いられていたが、近年ではそれを薄くした皮弁が臨床的に使用されている。しかし、薄くする手技に解剖学的根拠があるわけではない。今年度は全身のうち特に腹部に注目して、この部位の動静脈解剖を3次元的に明らかにすることを行った。当解剖学教室所蔵で遺族の承諾を得られた解剖用屍体を用い、全身の動脈系および静脈系に造影剤を注入する。腹部の皮膚皮下組織標本を採取し、立体視をするためにステレオで軟X線撮影を行った。また、倒立顕微鏡下にて、細い血管の立体構造を確認した。通常この筋皮弁の皮膚は臍近傍にある穿通枝に依存しているとされている。今回の観察で、この穿通動脈は皮下組織をほぼ垂直に上昇し、真皮直下で上外側に比較的長く走行していた。一方、静脈に関しては、真皮直下に明瞭な静脈網が存在し、この静脈網を集めるような血管は浅下腹壁静脈に流入する一方、枝を出し、その枝が皮下組織中で、その穿通動脈と伴走するようになっていた。また、静脈系においてはその他に、非常に細いが穿通動脈固有の伴行静脈も存在した。この伴行静脈は上述の穿通動脈と伴走するようになる静脈から分岐し、穿通動脈と末梢の方まで伴行し、真皮直下の静脈網に吻合していた。従って、腹直筋皮弁を薄くするには、この穿通動脈および静脈系を温存することが重要で、しかも浅下腹壁静脈といういわゆる皮静脈系を利用する事により、薄く大きい皮弁を臨床的にも作成することが可能と考えられた。
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