2002 Fiscal Year Annual Research Report
マウス膵ランゲルハンス島内β細胞におけるカオス的性質の生理的意義の解明
Project/Area Number |
14570036
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
菅野 隆浩 弘前大学, 医学部, 助教授 (90195181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮野 尚哉 弘前大学, 理工学部, 助教授 (10312480)
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Keywords | pancreatic β-cell / action potential / chaos / time series analysis / permutation entropy |
Research Abstract |
本年度の計画に基づき、まず、マウス膵インスリン分泌(β)細胞を一つの細胞に単離した状態とランゲルハンス島のままの組織状態において10mMグルコース溶液で刺激した際の活動電位を記録し、それらの時系列データのカオス的性質を非線形解析の手法を用いて検討した。活動電位はamphotericin Bを用いたperforated patch clamp法で記録した。また、これらの活動電位の記録と従来報告されているコンピュータシミュレイションによる数学的モデルとの定量的比較を行う目的で順列エントロピーという不変量を導入し、両者の複雑性の度合いを比較検討した。 単離状態で記録された活動電位では、カオスの性質である短期予測可能性、決定論的性質、非線形性をほとんどの細胞で見出だすことができた。一方組織状態では、単離状態で見られた諸性質をほとんど見出すことができなかった。両状態の性質の違いは、組織状態でβ細胞同士がgap junctionを介してお互いに電気的に結合していることに起因していると推定している。また、順列エントロピーを検討した結果では、β細胞から記録した両状態の活動電位の発火パターンは、Shermanらによって提唱された数学的モデル(Am.J.Physol.271: E362-E372,1996)のパターンよりもはるかに複雑であることが明らかになった。今後、改良された数学的モデルが実際の生体データに近いモデルかどうか評価する上で、順列エントロピーは大変有用な指標となると思われる。 これらの研究成果は、2編の論文として現在国際誌へ投稿中である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 宮野尚哉, 菅野隆浩, 徳田功, 泉井亮: "膵ランゲルハンス島β細胞集団のカオス同期における順列エントロピー"電子情報通信学会. NLP2002-103. 61-65 (2003)