2002 Fiscal Year Annual Research Report
新しい高血圧治療薬としてのTRP6蛋白質阻害薬の開発―天然毒とファージディスプレイを併用したアプローチ―
Project/Area Number |
14570079
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 隆司 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (30232573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下東 康幸 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (00211293)
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Keywords | TRP蛋白質 / 受容体活性化Caチャネル / 交感神経 / α_1アドレナリン受容体 / 血圧 / 阻害薬 / 天然毒 / 創薬 |
Research Abstract |
脊椎動物のTRP(transient receptor potential)蛋白質ホモログTRPC6が、血管交感神経刺激時にα_1-アドレナリン受容体を介して活性化されるCa^<2+>流入チャネルの必須の構成分子であるという最近の我々の研究結果に基づき、新しい高血圧治療薬としてのTRP6選択的阻害薬の開発を目指した。その第一段階として、天然粗毒から阻害活性をもつ物質の同定を試みた。3種の混合蛇毒抽出液を分画化し、阻害活性のスクリーニング用のサンプルとした。また、3つの類縁関係にあるTRP蛋白質、TRPC3、TRPC6、TRPC7をHEK293細胞に強制発現して、G蛋白質共役型受容体刺激によって活性化される、受容体作動性Caチャネル電流をパッチクランプ法にて測定し、これらのTRP蛋白質活性の指標とした。クロマトグラフィーによる精製・分画化、および阻害活性のある画分の同定とその細分画化を3回繰り返した結果、蛇毒(Bungarus faciatus)から、TRPC3とTRPC7に対して濃度依存的な阻害活性を示し、TRPC6に対しては全く阻害効果のない、推定分子量1000以下の単一画分が得られた。現在、この画分に含まれる成分を単一ピークとして分離し検定を行なう準備を進めており、近日中に阻害活性を有する単一物質の単離にまで漕ぎ着けたいと考えている。TRPC3、TRPC6、TRPC7にはアミノ酸レベルで約80%の相同性があるので、阻害作用が発生する部位を、これらの蛋白質の変異体を用いた解析によって明らかにできれば、これら3つのTRP蛋白質の各々に対して選択性の高い阻害薬開発のための重要なデータベースになると期待している。実際、現在、TRPC3、TRPC6、TRPC7のN端、膜貫通領域、C端を入れ替えたキメラを作成して、これらに対する阻害作用を検討し、作用部位の同定も平行して進めている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 井上隆司, 伊東祐之, 森泰生: "標的蛋白質からみた創薬:急速に拡大するTRP蛋白質ファミリーと新しい創薬の可能性"日本臨床. 66・1. 18-24 (2002)
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[Publications] Hiromitsu Morita, Juan Shi, Yushi Ito, Ryuji Inoue: "T-channel-like pharmacological properties of high voltage-activated, nifedipine-insensitive Ca2+ currents in the rat terminal mesenteiric artery"British Journal of Pharmacology. 137. 467-476 (2002)
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[Publications] Ryuji Inoue, Yasuo Mori: "New target molecules in the drug control of blood pressure and circulation"Current Drug Targets. 3. 59-72 (2003)
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[Publications] Ryuji Inoue, Toyohisa Hanano, Juan Shi, Yasuo Mori, Yushi Ito: "TRP protein as a novel non-voltage-gated Ca^<2+> entry channel involved in pathophysiological functions"Journal of Pharmacological Sciences. 91・4(In press). (2003)
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[Publications] 西田基宏, 原雄二, 井上隆司, 森泰生: "TRPチャネルを中心としたシグナル複合体形成と細胞の増殖・死の制御"日本薬理学会誌(Folia Pharmacologica Japonica). 121(In press). (2003)