2002 Fiscal Year Annual Research Report
ペスト菌エンドトキシンの化学構造および感染における役割
Project/Area Number |
14570255
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Research Institution | Kitasato Institute |
Principal Investigator |
川原 一芳 財団法人北里研究所, 基礎研究所, 室長 (20195126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 基博 自治医科大学, 医学部, 助教授 (20150089)
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Keywords | ペスト菌 / エンドトキシン / リピドA / コア糖鎖 / 化学構造 / 培養温度 / マクロファージ活性化 / 病原性 |
Research Abstract |
ペスト菌(Yersinia pestis)Yreka株を用いて、エンドトキシン(LPS)中のリピドAの化学構造およびその培養温度による変化を調べた。LPSから弱酸加水分解によりリピドAを調製し、MALDI-TOF MSによる質量分析を行った。その結果、27℃培養菌のリピドAでは主要な脂肪酸である3-OH-C_<14:0>に加えてC_<12:0>やC_<16:1>が比較的多く、リピドA1分子中の脂肪酸の合計が3分子のものから6分子のものまでが検出された。これに対して37℃培養菌のリピドAではC_<12:0>が少なく、C_<16:1>は検出されなかった。リピドA1分子中の脂肪酸は3分子ないし4分子のものが大部分であった。4-アミノアラビノース(Ara4N)の量にも変動がみられ、27℃培養菌のリピドA中に、より多くのAra4Nが検出された。さらに、LPSのコア糖鎖についても培養温度による構造変化を調べた。その結果、内部コアのKdo領域に存在するKdo類似糖であるKoが37℃培養時にはほとんど検出されなくなることがわかった。次に、これらのLPSおよびリピドAによる、ヒトおよびマウス由来クロファージ系細胞の活性化をTNF-α産生誘導能を指標にして調べた。その結果、37℃培養菌のLPSおよびリピドAは27℃培養菌のものに比べてTNF-α産生誘導能が低いことが明らかになった。しかもその差はヒトマクロファージ系細胞においてより顕著(約100分の1の活性)であった。これらの結果から、ペスト菌は宿主への感染温度である37℃において、より単純な構造のLPSを生合成し、その結果としてリピドA中の脂肪酸分子数が減少し、このためマクロファージ活性化能が低下することが明らかになった。このようなLPSの免疫活性化能の低下が、ペスト菌のヒトに対する強力な病原性と密接に関連しているのではないかと推定された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] K.Kawahara, H.Tsukano, H.Watanabe, B.Lindner, M.Matsuura: "Modification of the Structure and Activity of Lipid A in Yersinia pestis Lipopolysaccharide by Growth Temperature"Infection and Immunity. 70・8. 4092-4098 (2002)