2004 Fiscal Year Annual Research Report
ペスト菌エンドトキシンの化学構造および感染における役割
Project/Area Number |
14570255
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
川原 一芳 関東学院大学, 工学部, 教授 (20195126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 基博 自治医科大学, 医学部, 助教授 (20150089)
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Keywords | ペスト菌 / エンドトキシン / リピドA / 化学構造 / 培養温度 / 脂肪酸転移酵素 / 発現調節 / 病原性 |
Research Abstract |
前年度までの研究で、ペスト菌(Yersinia pestis)のリピドA生合成に働くと思われる2種類の脂肪酸転移酵素遺伝子と類似の遺伝子領域がYersinia pseudotuberculosisにも存在することがわかり、クローニングされた。しかし、ペスト菌リピドAの非極性脂肪酸がC_<12:0>およびC_<16:1>なのに対して、Y.pseudotuberculosisではさらにC_<16:0>を含む。このためY.pseudotuberculosisにはペスト菌とは異なるC_<16:0>転移酵素が存在する可能性も考えられた。この問題を解決するために、本年度になって発表されたY.pseudotuberculosisの全ゲノム塩基配列データを用いて、大腸菌およびペスト菌の脂肪酸転移酵素遺伝子と相同性を示す領域を検索した。その結果、ペスト菌の2つの遺伝子とほぼ100%の相同性を示す領域が見つかり、これらはすでにクローニングされた領域と一致した。また、これ以外に相同性の高い領域は見つからなかった。そこでこれらの遺伝子を両菌に共通のC_<12:0>転移酵素遺伝子およびC_<16:1>(C_<16:0>)転移酵素遺伝子と推定した。ペスト菌とY.pseudotuberculosisの対応する遺伝子同士は僅かな塩基配列の違いがあったが、プロモーター領域は同一であり、翻訳領域のアミノ酸配列も完全に一致した。従って、同じ酵素がペスト菌では低温でのみC_<16:1>を転移、Y.pseudotuberculosisでは常温でC_<16:0>、低温ではC_<16:1>を転移している可能性が高いと考えられる。この結果から、脂肪酸転移の培養温度による変化は、当初予想された温度による遺伝子発現や酵素活性の調節ではなく、基質となる脂肪酸の供給量と種類の変化により起こっているのではないかと推定された。本研究を通して、このようなYersinia属細菌に特有な、培養温度によるリピドAの顕著な構造変化が、結果的にペスト菌の強い病原性と密接に関連していることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)