2003 Fiscal Year Annual Research Report
神経毒性化学物質の脳クレアチンキナーゼ活性とその遺伝情報発現に及ぼす影響
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14570313
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health |
Principal Investigator |
伊規須 英輝 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (60108686)
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Keywords | クレアチンキナーゼ / 神経毒 / エネルギー / アクリルアミド / 酸化エチレン / 臭化メチル |
Research Abstract |
我々は、これまでin vitro(ラット脳ホモジェネート)およびin vivoで、アクリルアミド、酸化エチレン、臭化メチルが、クレアチンキナーゼ(CK)活性に対し、阻害効果を持つことを見出した。さらに、アクリルアミドに関して、in vivoにおける活性抑制がCKの遺伝情報抑制によるものでないかをmRNAのRT-PCRおよびWestern blottingにより調べた。今回これについて定量的検討を加えたが、ラット小脳の細胞質CK(Bサブユニット)mRNAおよび蛋白量、ミトコンドリアCK(ubiquitous form)mRNAについて、対照と全く差のないこと、すなわち、少なくともアクリルアミドについて上記所見は、CK蛋白量減少による見かけの活性低下ではないことを確認した。 CKは次の反応(双方向)を触媒する;ATP+creatine←→ADP+phosphocreatine。諸臓器特に脳におけるエネルギー(ATP)レベル維持の重要性から、CK活性阻害は神経毒性発現に関与している可能性が考えられる。一方近年、エネルギー生産と消費の場を移動するのはATPそのものでなくphosphocreatineであること、ミトコンドリア(エネルギー生産器官)のCKは上記反応の左→右に関与し、phosphocreatineを生産(およびミトコンドリアにADPを供給して呼吸を促進)すること、細胞質CKは右→左反応により、エネルギー消費の場において迅速にATPを生産すること("phosphocreatine shuttle")が確立したと言ってよい。ここで、一般に神経細胞におけるミトコンドリアとエネルギー消費部位の距離の大きさを考慮すると、アクリルアミド、酸化エチレン、臭化メチルという代表的神経毒性化学物質がいずれもCK活性阻害を引き起こすことの意義は大きいと考えられる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Matsuoka M., Igisu H.: "Effects of heavy metals on mitogen-activated protein kinase pathways"Journal of UOEH. 25・Supp11. 209-216 (2003)
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[Publications] Matsuoka M., Igisu H., Morimoto Y.: "Phosphorylation of p53 protein in A549 human pulmonary epithelial cells exposed to asbestos fibers"Environmental Health Perspectives. 111・4. 509-512 (2003)
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[Publications] Wispriyono B., Matsuoka M., Igisu H: "Acrylamide does not cause apparent changes in genetic expression of creatine kinase in rat cerebellum"Journal of UOEH. 26・1. 51-57 (2004)
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[Publications] Sugisawa, N., Matsuoka M., Okuno, T., Igisu H.: "Suppression of cadmium-induced JNK/p38 activation and HSP70 family gene expression by LL-Z1640-2 in NIH3T3 cells"Toxicology and Applied Pharmacology. 発表予定. (2004)
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[Publications] 伊規須 英輝: "日常診療にすぐに役立つ各科常用最新処方:急性中毒"大道学館出版部. 537 (2003)