2005 Fiscal Year Annual Research Report
CAT技法を用いた精神健康状態評価法の開発および一般職域への試用方策に関する研究
Project/Area Number |
14570367
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Research Institution | Faculty of Human and Social Environment, Hiroshima International University |
Principal Investigator |
岩田 昇 広島国際大学, 人間環境学部, 教授 (80203389)
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Keywords | 産業精神保健 / 項目反応理論 / Computerrized-Adaptive Testing / メンタルヘルス |
Research Abstract |
本年度は、下記2課題を実施した。 (1)精神健康状態評価のためのCAT(Computerized-Adaptive Testing)システムの開発 職業性ストレス簡易版調査票の項目に対する、多値型データのIRT解析を基に、CATシステムの初版を開発した。回答選択肢数4に対応させるため多値型のIRTモデル(Modified Graded Response Model)を適用し、各項目の選択肢間の閾値(位置パラメータ)および識別力パラメータを推定した。CATアルゴリズムは制約付きベイズ法による項目選択に基づき、CAT終了条件にはθ値の推定誤差0.35未満とした。また、回答者への結果フィードバック画面も開発した。IRT-CATシステムの特徴は、(1)全項目に答える必要がない(潜在特性上の位置(θ)の推定誤差が収束条件をクリアすれば、すぐに検査終了、別の測定時点・項目への回答結果でも比較が可能)、(2)同一項目群の繰り返し使用やこれまでの測定尺度のような常に同一順序の項目提示が回避(記憶されにくい)、(3)対象者のレベルに応じた項目選択、(4)結果の迅速なフィードバックが可能などである。 (2)CATシステム初版の現場試用 開発したメンタルヘルス用CATシステム初版を実際の事業所で試用した。その結果、(1)平均10項目でCATによるメンタルヘルスレベルの推定は終了、(2)質問の画面提示から回答が得られるまで平均約7秒であった。これらは共に性差を認めなかった。さらに、(3)推定誤差が小さくなることが収束条件であるため、識別力の大きな質問項目が選択提示される傾向が顕著、(4)識別力の小さい『身体的愁訴』の質問は別のモジュールとする必要があること、(5)労働現場での使用では中断機能が必要であることなどの問題点・課題も明らかとなった。自記式調査票に比して多くの利点があるメンタルヘルス評価CATシステムは、本研究で初めて具体的な形(初版)となった。本システムをさらに改善拡張していくことにより、有用な次世代のメンタルヘルス増進活動の補助的ツールとなることが明らかとなった。
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