2002 Fiscal Year Annual Research Report
初老期痴呆患者を介護する者の介護負担:その現状把握と負担軽減のための施策の検討
Project/Area Number |
14570375
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Research Institution | National Institute for Longevity Sciences,NCGG |
Principal Investigator |
荒井 由美子 国立療養所中部病院, 長寿医療研究センター・老人ケア研究部, 室長 (00232033)
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Keywords | 初老期痴呆 / 痴呆性疾患 / 前頭側頭葉変性症 / 介護者 / 介護 / 介護負担 / 行動異常 / 半構造化面接 |
Research Abstract |
初老期の発症が多い痴呆性疾患である前頭側頭葉変性症(Fronto-Temporal Lobar Degeneration : FTLD)患者の在宅介護上の問題点を、家族介護者の視点から明らかにすることを目的とし、半構造化面接による調査を行った。面接では、主介護者である家族が、在宅介護時に困難を感じたエピソードを、ADL(食事、移動、更衣、整容、入浴、排泄)および精神症状・行動異常の7領域に分け回答を求めた。回答されたエピソードを、内容をもとに領域ごとに介護上の問題点としてまとめ、何例が該当するかを検討した。対象は、発症時65歳未満であり、2002年7月〜12月にI病院にて診療を受け、書面での同意を得たFTLD患者5名(男性2名、女性3名)と、その主たる家族介護者であった。領域ごとの介護上の問題点と、該当した例数を示す。食事:詰め込み食い(3例)。頻繁な誤嚥(2例)。執拗に食事を要求し続ける(3例)。歯科治療を拒否し特別食(4例)。移動:足が速く制止困難(4例)。更衣:介助に抵抗(3例)。整容:介助に抵抗(2例)。入浴:入浴拒否(4例)。介助に抵抗(3例)。風呂から飛び出し走り回る(2例)。排泄:尿便共に失禁(4例)。失禁したまま歩く、失禁した便を踏み歩き回る(2例)。トイレ以外でもオムツをおろし排泄(2例)。精神症状・行動異常:原因不明の痛みの訴え(3例)。感覚異常による寒さの訴え(2例)。自殺企図(2例)。常同的に同じ所へ通う(2例)。昼夜を問わず飛び出し俳徊(4例)。易怒性の性格変化(3例)。突然の激しい行動により制止困難(4例)。同じ行動や言葉を繰り返す(5例)。数度の交通事故(2例)。以上から、FTLD患者における在宅介護上の問題点の特徴は、拒否の激しさや多動による介助の困難さ、常に動き回っており突発的に激しい行動をするため目が離せないことであると考えられた。
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Research Products
(25 results)
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[Publications] Arai Y, Ueda T: "Paradox revisited still no direct connection between hours of care and caregiver burden"Int J Geriatr Psychiatry. 18(2). 188-189 (2003)
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[Publications] Arai Y, Zarit S, Sugiura M: "Patterns of outcome of caregiving for the impaired elderly : a longitudinal study in rural Japan"Ageing and Mental Health. 6(1). 39-46 (2002)
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[Publications] Arai Y, Masui K, Sugiura M: "New Japanese Long-Term insurance system slashes carer time but problems remain"Int J Geriatr Psychiatry. 17(5). 489-491 (2002)
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[Publications] Minami Y, Sasaki T, Arai Y: "Psychological profiles and health status in Japanese female patients with systemic lupus erythematosus : the Miyagi Lupus collaborative study"J Epidemiology. 12(2). 55-63 (2002)
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[Publications] Asami T, Washio M, Arai Y: "Burden among Caregivers of Elderly Patients with Osteoarthritis of Hip Joint"Fukuoka Acta Met. 93(6). 96-103 (2002)
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[Publications] Washio M, Inoue N, Arai Y: "Depression among caregivers of patients with Parkinson disease"Int Med J. 9(4). 265-269 (2002)
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[Publications] Washino M, Wada J, Tokunaga S, Arai Y: "Long-term Care Insurance for Elderly and Depression among Caregivers of the Frail Elderly in Urban Japan : A follow-up Study"Int Med J. 9(4). 251-255 (2002)
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[Publications] 荒井由美子: "公的介護保険の導入と介護者の介護負担に関する研究"Aging & Health. 2. 32-33 (2002)
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[Publications] 荒井由美子: "高齢者ケアの質の向上"老年精神医学雑誌(巻頭言). 13(7). 782-783 (2002)
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[Publications] 荒井由美子: "介護負担度の評価"総合リハビリテーション. 30(11). 1005-1009 (2002)
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[Publications] 荒井由美子: "在宅介護における介護負担と介護負担がおよぼす影響"Gp net. 49(8). 24-31 (2002)
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[Publications] 荒井由美子: "介護負担についてのリサーチ"医事新報. (印刷中).
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[Publications] 水野洋子, 荒井由美子: "高齢者施設ケアサービスの評価-英国での最近の試み"老年社会科学. 24(1). 39-50 (2002)
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[Publications] 工藤 啓, 菅沼 靖, 右田周平, 荒井由美子: "「健康日本21」市町村計画策定支援について"公衆衛生. 66(10). 749-753 (2002)
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[Publications] 松鵜甲枝, 鷲尾昌一, 荒井由美子: "訪問看護ステーションを利用している在宅要介護高齢者の入院・入所に関れる要因"日本公衆衛生学雑誌. 49(10). 1107-1116 (2002)
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[Publications] 増井香織, 杉浦ミドリ, 荒井由美子: "介護保険制度導入直後の介護負担の変化-要介護度,サービス利用との関連-"保健婦雑誌. (印刷中). (2003)
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[Publications] 桑原裕一, 鷲尾昌一, 荒井由美子: "要介護高齢者を介護する家族の負担感とその関連要因:福岡県京築地区における介護保険制度発足前後の比較"保健医療科学. 51(印刷中). (2002)
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[Publications] 鷲尾昌一, 荒井由美子, 和泉比佐子: "介護保険制度導入1年後における福岡県遠賀地区の要介護高齢者を介護する家族の介護負担感: Zarit介護負担尺度日本語版による検討"日本老年医学会雑誌. 40(2)(印刷中). (2003)
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[Publications] 山崎律子, 鷲尾昌一, 荒井由美子: "地方都市の介護保険サービス利用に関する現状"訪問看護介護. (印刷中).
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[Publications] 工藤 啓, 右田周平, 菅沼靖, 荒井由美子: "地域ケアシステム構築の手法について-企画書と計画書の重要性-"公衆衛生. 67(印刷中). (2003)
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[Publications] 荒井由美子, 武田明夫: "老年期痴呆の治療と看護"青葉安里, 編 東京:南江堂. 11 (2002)
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[Publications] 荒井由美子: "シンプル衛生公衆衛生学 2002"鈴木庄亮, 久道茂, 編 東京:南江堂. 11 (2002)
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[Publications] 荒井由美子: "シンプル衛生公衆衛生学 2003"鈴木庄亮, 久道茂, 編 東京:南江堂(印刷中). (2003)
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[Publications] 荒井由美子: "老年期痴呆の克服をめざして"柳澤信夫, 編 東京:長寿科学振興財団(印刷中). (2003)
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[Publications] 荒井由美子: "健やかに老いるために 2002 〜長寿科学総合研究(平成11〜13年度)の成果から〜"柳澤信夫, 編 東京:長寿科学振興財団(印刷中). (2003)