2003 Fiscal Year Annual Research Report
H.pyloriによる細胞増殖およびアポトーシス誘導機序の分子生物学的検討
Project/Area Number |
14570445
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Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
吉田 晴彦 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (60240305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光野 雄三 東京大学, 医学部附属病院, 医員
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / アポトーシス / アンチアポトーシス / c-IAP2 / NFκB |
Research Abstract |
背景と目的 反アポトーシス、すなわちアポトーシスの抑制がある種の発癌に関与していることが知られている。H.pylori感染においては一般にアポトーシスが亢進しているが、一方でH.pyloriが反アポトーシスを誘導することも知られている。アポトーシスと反アポトーシスのバランスが崩れて後者に傾いた場合、変異細胞の排除が不十分となって発癌につながる可能性が考えられる。我々は反アポトーシス分子のなかでもc-IAP2が、H.pyloriによってもっとも強く誘導されることを示してきた。本実験ではこのc-IAP2誘導の文政生物学的機序を検討した。 方法 ヒト胃癌由来培養細胞MKN45と、cagPAI陽性H.pylori菌株TN2の共培養系を用いた。c-IAP2およびその他の反アポトーシス蛋白の発現はcDNAアレイおよびreal-time PCR法により調べた。c-IAP2発現のcagPAI依存性はcagPAI変異導入菌株を用いて調べた。またc-IAP2アンチセンスを導入し、培養細胞のアポトーシスに対する影響をTUNEL法により計測した。c-IAP2発現に対するNFκBの関与についてc-IAP2プロモーター領域へ変異を導入したレポーターアッセイにより調べた。また、IκBαスーパーサプレッサーおよびNFκB阻害剤CAPEの作用も調べた。 成績 H.pyloriはc-IAP2の発現をcagPAI依存性に増強した。また、TUNEL法によってc-IAP2アンチセンスが反アポトーシスを抑制することを確認した。c-IAP2プロモーター領域の切断および変異導入によるレポーターアッセイにより、c-IAP2の発現にはNFκB結合領域が必要であることが判明した。c-IAP2発現のNFκB依存性は、IκBαスーパーサプレッサーおよびCAPEを用いた実験においても確認された。 考察 わが国では大多数を占めているcagPAI陽性H.pyloriは、NFκB活性化を介して反アポトーシス蛋白であるc-IAP2発現を誘導してアポトーシスを抑制することを明らかとした。H.pylori感染においては炎症によってアポトーシスが生じているが、H.pyloriにはアポトーシスを抑える働きもある。これが同じくH.pyloriにより惹起される種々の細胞増殖性の細胞内信号と相俟って発癌のリスクを高めている可能性が示唆される。また、H.pyloriの除菌によって縮小・焼失することが知られているMALTリンパ腫や過形成性ポリープにおいては、細胞増殖と反アポトーシス作用が直接関与している可能性も考えられる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Maeda S, Ansarsanaa J, Mitsuno Y, et al.: "Relationship between nuclear factor-kappaB activation and virulence factors of Helicobacter pylori in Japanese clinical isolates"Molecular Pathology. 55. 286-93 (2002)