2005 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス関連大腸運動異常における慢性内臓過敏の意義と抗セロトニン療法の探究
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14570480
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
水田 陽平 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (40274641)
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Keywords | ストレス / 大腸運動 / 慢性内臓過敏 / セロトニン経路 / 過敏性腸症候群 |
Research Abstract |
目的; 慢性内臓過敏の排便・大腸通過時間に与える影響を非ストレス下およびストレス下で検討し、その影響がセロトニン経路を介しているかをラットモデルを用いて明らかにする。 方法と結果; 1.ラットモデルを作成し、abdominal withdrawal reflexにより慢性内臓過敏を確認した。 2.平均体重は内臓過敏群とコントロール群に有意差を認めなかった。 3.直腸の病理組織像はH.E染色上、両群に明らかな差異を指摘しえなかった。 4.排便量は測定開始まで飲食に自由アクセスとし1ケージ3匹のラットにより60分で排泄された便重量の総和とした。非ストレス下では、両群の排便量に差を認めなかった。 5.ストレス負荷にはwrap-restraint stressを用いた。ストレス下では内臓過敏群で有意に排便量の増加を認めた。 6.セロトニンレセプターに対するアゴニストとして5-HTクレアチニンスルフェートを、アンタゴニストとしてグラニセトロン(5-HT3受容体拮抗薬)を用いた。5-HT投与により両群とも排便量は増加し、ストレス負荷と同様のパターンを示した。グラニセトロンを前投与すると、ストレスにより増加した排便量は、コントロール群も内臓過敏群も有意に抑制され、両者で有意差がなくなった。 7.大腸輸送能の測定は大腸各区域内のクロム放射活性をγカウンターで測定し、ゲオメトリックセンターを算出した。ストレスの有無に関わらず、両群で有意差を認めなかったが、内臓過敏群でストレスにより強く促進される傾向がみられた。 結語; 本研究で得られた結果と過敏性腸症候群では内臓知覚の閾値低下がみられることを考え合わせると、下痢型過敏性腸症候群におけるストレスによる症状悪化には慢性内臓過敏の関与が推測され、その治療として5-HT3受容体拮抗薬の効果が期待される。
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