Research Abstract |
TRAILは,FasやTNFのホモロジー解析から同定された新しい腫瘍壊死因子である.TRAILは,そのレセプターであるKILLER/DR5あるいはDR4を介して癌細胞特異的にアポトーシスを惹起するが,Decoyレセプターが多く発現している正常細胞ではアポトーシスが起こらず,癌特異的アポトーシス誘導因子として注目されている.一方,進行消化器癌では抗癌化学療法で必ずしも良い生命予後が得られておらず,新しい治療戦略の開発が望まれている.TRAILはln vitroの検討で,多くの消化器癌細胞のアポトーシスを誘導し,正常細胞への影響も少ないことから臨床応用への期待が高まっている.しかし,最近の報告でTRAIL耐性癌細胞株の存在が明らかにされ,今後その耐性メカニズムの解明あるいはその克服が重要となっていくと考えられている.そこで,本研究ではTRAILの耐性機序をDNA microarrayを用いて多様な遺伝子解析を行いそれを解明する.各種消化器癌細胞株にTRAILを暴露し細胞増殖抑制,アポトーシス誘導を検討し,またWestern blotまたはflowcytometryによるactive caspase 3を測定した.その結果,TRAIL感受性株(HCT-116,SW480)では,TRAILにより有意な細胞増殖抑制を認め,Caspase 3のcleavageを伴ったアポトーシスが惹起されていた.一方,TRAIL耐性株(WI38,HS27,SKOV3)では上述したアポトーシス誘導は認められなかった.上記細胞株のDR4あるいはDR5の発現,アポトーシス関連分子(caspase 8,caspase 3,FLIP, XIAP1,DECOYレセプター)をwestern blotで確認しところ,TRAIL耐性株ではFLIPの発現が亢進している傾向が認められた.この結果は,過去の報告に矛盾しない結果であった.そこで,更にTRAIL耐性に関与している分子を検索する目的で,最もTRAILに感受性の高い細胞株と低い株のTRAIL処理前後の発現遺伝子の相違をDNA microarray(Affymetrix社,Gene Chip)を用いて検討した.その結果,耐性株においてFLIP,既知のBcIXL以外の遺伝子10数種類が感受性株よりも亢進していることが判明し,現在その遺伝子の関与を検討中である.
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