2002 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸調節機構における摂食・睡眠関連ペプチドの役割に関する研究
Project/Area Number |
14570533
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
中野 均 旭川医科大学, 医学部, 助手 (40221452)
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Keywords | 肥満 / レプチン / 呼吸調節 / 代謝 / 脳脊髄液 |
Research Abstract |
【目的】レプチンは体組織の脂肪細胞から分泌される循環ホルモンであり、肥満肺胞低換気や睡眠時無呼吸症候群などの呼吸障害の病態に深く関わっている可能性が指摘されている。しかし、レプチンに呼吸刺激作用があるか否かについては明らかではない。そこで、安静呼吸、代謝、呼吸の化学感受性に与えるレプチンの影響について検討した。 【方法】16週齢のZuckerラットの肥満群(平均体重765g)と痩せ群(平均体重420g)8匹ずつを用いた。自発呼吸下に麻酔深度を維持するために腹腔内にペントバルビタールを持続投与した。また、定位脳固定装置を用いて側脳室内にポリエチレン製カテーテルを留置し、レプチンや人工脳脊髄液(CSF)注入用のマイクロシリンダーを接続した。ラットを容積3.5lのアクリル製チャンバーに挿入し、ボデイプレチスモグラフ法で換気諸量を、吸入気と排出気のO_2およびCO_2濃度差から酸素消費量と炭酸ガス産生量を求めた。側脳室内に留置したカテーテルよりCSFを10μl注入し,呼吸が安定していることを確認し,9%CO_2ガスを2分間吸入しコントロールの高炭酸ガス換気応答を観察した。その後呼吸が再度安定したところで,レプチン10μgを投与し,90分間安静換気を観察した後に、高炭酸ガス換気応答を施行した。 【結果】正常痩せラットにおいてはレプチン投与後に分時換気量は時間経過とともに徐々に増加し、60分以降で有意に増加した。一回換気量は30分以降で、呼吸数は90分で有意に増加した。一方,肥満ラットにおいてはレプチン投与においても分時換気量,一回換気量,呼吸数に有意な変化を認めなかった。また、正常群においてはレプチン投与後に徐々にVO_2、VCO_2が上昇した。換気酸素当量は時間経過ともに上昇傾向を認めるものの有意な変化を認めなかった。肥満群においてはレプチン投与後もVO_2、VCO_2、換気酸素当量ともに変化を認めなかった。高炭酸ガス換気応答はレプチン投与により両群で有意な変化は認めなかった。 【考案】正常の状態ではレプチンは安静換気刺激作用を有すると考えられる。しかし、レプチンによる安静換気の増大は、直接の呼吸刺激作用というよりも、むしろ交感神経や代謝の亢進に基づく二次的な作用である可能性が高い。一方、レプチン受容体に異常がある場合、外因性のレプチンは呼吸や代謝に影響を与えないことが示唆された。
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