2002 Fiscal Year Annual Research Report
脱髄疾患の分子機構とその制御の臨床応用に関する免疫分子生物学的研究
Project/Area Number |
14570585
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高 昌星 信州大学, 医学部, 教授 (80143981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 元基 信州大学, 医学部, 教授 (60223088)
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Keywords | 多発性硬化症 / 脱髄疾患 / cyclooxygenase / lipoxygenase / 実験的自己免疫性脳脊髄炎 |
Research Abstract |
多発性硬化症(MS)はヒトにおける中枢神経系脱髄疾患の代表的疾患であり、厚生労働省の特定疾患に指定されている難治性疾患である。MSは炎症性疾患であることが明らかにされており、その発症機序に自己免疫が関与しているとされている。MSの発症機序の解明に動物実験モデルは大きく貢献してきた。MSの動物実験モデルである、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症機序にNOやアラキドン酸代謝物をはじめとした炎症性メディエーターが関与していることが示唆されているが、その詳細な役割については不明である。我々はEAE病変におけるcyclooxygenase (COX)-1、COX-2および5-lipoxygenase(5-LOX)の発現を経時的に観察するとともに、COXおよび5-LOXの選択的阻害薬であるphenidoneを用いてEAEにおけるその役割を検討した。Western BlotではCOX-1およびCOX-2はともに臨床症状がピークに達した時点で有意に亢進し、回復期には低下した。5-LOXも同様に臨床症状のピーク時に増加していた。免疫組織学的にはCOX-1は健常ラット脊髄中のアストロサイトにもみられたが、EAEラット脊髄中ではさらにCOX-1陽性アストロサイトが増加しており、マクロファージがみられた。神経細胞と内皮細胞にはCOX-1はみられなかった。一方、COX-2は健常ラット脊髄中の神経細胞とアストロサイトの一部に発現がみられ、EAEラット脊髄中ではさらに発現が増加していた。さらにCOX-2はEAEラット脊髄の内皮細胞にも発現がみられた。5-LOXはCOX-1、COX-2と同様に健常ラット脊髄のアストロサイトに発現がみられ、EAEラット脊髄ではさらに増加していた。Phenidone投与群は対照群に比し、発症率、臨床垂状の重症度、麻痺の期間ともに低下していた。以上より、EAEの発症にはCOX-1、COX2、および5-LOXが炎症性メディエーターとして、重要な役割を果たしており、これらの選択的抑制薬はMSで代表される中枢神経系における炎症性疾患の制御に役立つことが示唆される。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Shin T, Ahn M, Moon C, Jee Y, Wie MB, Shin YG, Koh C-S: "An inhibitor of both cyclooxygenases and 5-lipocygenase ameliorates rat paralysis in experimental autoimmune encephalomyelitis by suppressing its target enzymes"Multiple Sclerosis. (印刷中). (2003)
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[Publications] Okunura N, Terasawa F, Fujita K, Fujihara N, Tozuka M, Koh C-S: "Evidence that heterodimers exist in the fibrinogen Matsumoto II (γ308→K) proband and participate in fibrin fiber formation"Thrombosis Research. 107. 157-162 (2002)
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[Publications] Kim BS, Fuller Ac, Koh C-S: "Cytokines, chemokines, and adhesion molecules in TMEV-IDD"Multiple Sclerosis. (印刷中). (2003)
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[Publications] 高 昌星: "内科学"朝倉書店. 2297(2077-2083) (2003)