Research Abstract |
一昨年度,片側パーキンソン病(PD)モデルラットにチロシナーゼ産生細胞としてメラノーマB16F1細胞を細胞移植し,移植後40日間に及ぶアポモルフィン誘発回旋運動の著明な改善,移植メラノーマ細胞からのドパミン(DA)生成を認めた.また昨年度は,片側PDモデルマウスの障害側線条体背外側に,新生児C57BLマウスの背部皮膚からの初代培養メラノサイトを移植し,移植後3ヶ月間に及ぶ持続的なアポモルフィン誘発回旋運動の著明な改善を認めた.本年度は,移植後の黒質,線条体でのDA,チロシナーゼ,チロシン水酸化酵素の免疫染色を行い,組織学的変化,移植細胞の生着性を検討した.また,PDモデルにおけるチロシナーゼ発現細胞の脳内分布について検討した. 1.パーキンソン病モデルの大脳基底核への初代培養メラノサイトの細胞移植 C57BLマウスの背部皮膚からの初代培養メラノサイトを移植したPDモデルマウスでは,移植3ヶ月後においても移植側線条体の挿入針跡周囲にメラニン顆粒を含む移植メラノサイトの生着を認め,移植側線条体の背外側脳梁に接してDAおよびチロシナーゼ陽性シグナルの増加が認められた.また,黒質・線条体のチロシン水酸化酵素陽性DA神経細胞体・線維の脱落は,移植により不変であった. 2.パーキンソン病モデルでのチロシナーゼ陽性細胞の脳内分布 PDモデルマウスの脳切片を用いたチロシナーゼと神経・グリア細胞マーカーの二重染色では,チロシナーゼ陽性シグナルは主に脳梁,線条体,黒質のオリゴデンドロサイトに認められ,PDモデル障害側の線条体,黒質では,それぞれ減少,増加していた. 一昨年度のメラノーマ細胞の移植,昨年度の初代培養メラノサイトの移植によるパーキンソニズムの改善結果をあわせると,メラノサイトを含むこれらチロシナーゼ産生細胞の細胞移植による持続的なDA神経機能補完作用は,PD治療に応用できうるものであると考えられる.
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