2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14570677
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
矢野 捷介 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50039864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 信二 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (00136657)
河野 浩章 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (30325659)
芦澤 直人 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (10301368)
山下 俊一 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30200679)
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Keywords | 成長ホルモン / 心肥大 / 心線維化 / 拡張機能不全 / TGF-β / MAPK / Smad / シグナル伝達 |
Research Abstract |
拡張型心筋症に対する成長ホルモン(GH)療法により、左室収縮機能不全が改善したという成績や、心筋梗塞モデルラットに対するGH療法にて左室機能を保持したという成績が報告され、GH治療の有用性が期待されている。しかし、GHが有用でないという報告もあり、GHの心機能に対する作用は一定の見解が得られていない。また、心機能保持に対する作用がGHによる直接作用か、あるいはIGF-1を介した間接作用かについても不明である。われわれは、GH投与の心臓に対する慢性効果についてin vivo studyを行い、次にGHが抗線維化作用を有するかどうかを、線維化の指標であるTGF-βシグナルに着目してin vitro studyを行った。 まずin vivoにおいて、4週令雌性Wistar-Furth ratを以下の3群に分けた。(1)mGH3細胞を皮下移植したGH産生腫瘍ラット群(GH群)(2)浸透圧ポンプを用いたsubpressor doseのAngiotensin II持続注入ラット群(Ang II群)(3)正常ラット群(C群)。体重あたりの心重量はGH群で増加しており、心エコー上、GH群ではC群と比較し、有意な求心性左室肥大を認めたが、左室拡張能、収縮能は保たれていた。摘出心臓のアザン・マロリー染色にてAng II群で間質線維化の発現増強を認めたがGH群は軽度であった。またGH群においてPAI-1,fibronectin等の細胞外マトリックス(ECM)蛋白の発現増強はなく、TGF-βの発現のみ増強していた。次にin vitroにおいて心線維芽細胞に対し、GH、IGF-1、TGF-βを単独、あるいは併用添加した。IGF-1はTGF-βとの併用により、ECM蛋白の産生、およびTGF-βシグナル伝達の転写活性レベルにおけるMAPK系の指標である3TPルシフェラーゼ活性の上昇を認め、逆にGHとTGF-βとの併用ではそれらの発現および活性を抑制していた。TGF-βはSmad系よりもMAPK系で強く制御されており、p38MAPKのリン酸化レベルでも、GH, TGF-β併用にて有意に抑制されていた。 以上の結果より、GHは心臓において、p38MAPKの脱リン酸化を介したTGF-βシグナル伝達をdownregulateすることにより、抗線維化作用をもたらしていることが示唆された。
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Research Products
(1 results)