2003 Fiscal Year Annual Research Report
X連鎖精神遅滞・αサラセミア症候群(ATR-X)の分子遺伝学的解析
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14570712
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
斉藤 伸治 北海道大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (00281824)
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Keywords | ATR-X / 精神遅滞 / 遺伝子診断 / 保因者診断 |
Research Abstract |
私たちは、ATR-X日本人症例の集積を進め、これまでに24家系27例の症例を集積し、臨床的確診例18家系21例、疑診例6家糸6例を対象とした解析の結果、24家系27例中、21家系24例で遣伝子変異を同定した。このようにATR-Xの分子遺伝学的診断の基礎を構築することができた。ATRXはX連鎖精神遅滞のひとつであり、女性保因者の存在は遺伝カウンセリングの観点から重要であるのみならず、遺伝子産物の生物学的意義を理解する上で重要である。これらの家系のなかで母親を含む女性保因者の解析を次の課題として取り組んだ。 ATRX遺伝子変異を解析できた8名の母のうち、6名は保因者であった。のこりの2名は変異を持たず、患者における変異はde novo変異と考えられた。変異保因者女性は母と女性同胞を合わせて7名であった。この7名を対象にX染色体不活化解析を行ったが、多型情報などにより、4名の女性保因者において不活化解析が可能であった。解析できた4名のうち3名においてはX染色体不活化の偏り(Skewed)パターンであり、これまでの報告と一致した。しかし、軽度精神遅滞を有する母親においてX染色体不活化パターンの偏りを認めずnon-skewedパターンであった。この結果は精神遅滞を有する母においては変異をもつX染色体が不活化を逃れ、精神遅滞の原因となりうる可能性を示唆する。したがって、ATRX遺伝子変異が女性精神遅滞の原因となりうることを示すことができた。 これらの結果からATRXはX染色体不活化の対象となる遺伝子であり、保因者女性ではX染色体の不活化を偏らせることで、発症を回避するメカニズムが示された。しかし、このメカニズムは完全ではなく、偏りが不十分な場合に女性においても精神遅滞を発症するリスクが存在する可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 斉藤伸治: "Angelman症候群"今日の小児治療指針第13版. 13. 143-143 (2003)
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[Publications] Saitoh S, Hosoki K, Takano K, Sudo A: "Germline mosaicism of a novel mutation of UBE3A in Angelman syndrome"Am J Hum Genet (sup). 73. 290-290 (2003)
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[Publications] Kato A, Fukai K, Oiso N, Hosomi N, Saitoh S, Wada T, Shimizu H, Ishii M: "A novel P gene missense mutation in a Japanese patient with oculocutaneous albinism type II (OCA2)"Journal of Dermatological Science. 39. 189-192 (2003)
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[Publications] Saitoh S, Wada T, Okajima M, Takano K, Sudo A, Niikawa N: "Uniparental disomy and imprinting defects in Japanese patients with Angelman syndrome"Brain Dev. (in press).