2002 Fiscal Year Annual Research Report
サリドマイド/バルプロ酸ナトリウム投与ラットを用いた自閉症の病態の解明
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14570720
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
成田 奈緒子 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (40306189)
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Keywords | 自閉症 / モデルラット / 行動解析 / サリドマイド / 八方向放射状迷路 / モノアミン / セロトニン / バルプロ酸ナトリウム |
Research Abstract |
本年度は、モリスの水迷路、及び八方向放射状迷路を用いた自閉症モデルラットの行動解析を重点的に行った。その結果、以下のことを解明した。 1.モリスの水迷路試験 本モデルラットにおける空間認知と記憶学習を検索するため、正常コントロール群、サリドマイド投与群、及びバルプロ酸ナトリウム投与群それぞれ7-8匹を用いて水迷路試験を行った。5日間連続で台の位置を探すレギュラートライアル、及びその後台の位置を変えて行うリバーサルタスク共に自閉症モデルラット群と正常群との成績の差はみられなかった。 2.八方向放射状迷路試験 水迷路における運動能力面でのハンディをなくすため、また様々なパラメーターからモデルラットの行動を観察するために、次に八方向放射状迷路を用いた行動実験を行った。八本のアームの先端に餌をおき、ラットを真ん中のプラットホームにおいて行動をビデオ撮影すると共に、空腹ラットがそのすべての餌を獲得するまでの時間、及び正しい選択をする回数、一度餌を取ったアームに再び進入する回数などのパラメーターごとのデータを取り、解析した。その結果、自閉症モデルラット群ではサリドマイド・バルプロ酸ナトリウムいずれの投与群においても正常コントロール群に比較して(1)正答率は試行を重ねると改善するにも関わらず、誤答率は試行を重ねても改善しないこと、(2)1試行に要する時間が短く、一本のアーム当たりの滞在時間が短いこと、(3)学習記憶において有意に劣っていること、がわかった。また、自閉症モデルラットにおいては、意味・目的のない動き(non-exploratory movement)が正常群に比較して多く、これはヒト自閉症患者において観察されることから、行動学的にも本モデルラットが自閉症の病態を一部再現している可能性が示唆され、大変興味深い。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Narita N, Kato M, Tazoe M, Miyazaki K, Narita M, Okado N: "Increased monoamine concentration in the brain and blood of fetal thalidomide-and valproic acid exposed rat ; putative animal models for autism"Pediatric Research. 52(4). 576-579 (2002)
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[Publications] Okado N., Narita M., Narita N: "A biogenic amine-synapse mechanism for mental retardation and developmental disabilities"Brain & Development. Suppl.1. S11-S15 (2001)
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[Publications] 成田奈緒子: "乳幼児突然死症候群とセロトニン"クリニカルニューロサイエンス. (5月号掲載予定). (2003)
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[Publications] 成田正明, 成田奈緒子, 田副眞美, 作田亮一, 岡戸信男, 永井敏郎: "特異なセロトニントランスポーター遺伝子アリルをもった神経性無食欲症(AN)の一例-AN発症機序解明の新しい手がかり-"脳と発達. 33. 74-75 (2001)
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[Publications] 作田亮一, 田副眞美, 成田奈緒子, 成田正明, 岡戸信男, 永井敏郎: "神経性無食欲症患者における全血セロトニン値の低下"脳と発達. 33. 76-77 (2001)