2002 Fiscal Year Annual Research Report
川崎病の病因解明:分子遺伝学的解析および血管分子生物学的手法を用いたアプローチ
Project/Area Number |
14570786
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
石井 正浩 久留米大学, 医学部, 講師 (90222950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 洋子 久留米大学, 医学部, 助手 (40309787)
古井 潤 久留米大学, 医学部, 助手 (00341339)
牟田 広実 久留米大学, 医学部, 助手 (40343694)
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Keywords | 川崎病 / 血管分子生物学 / 分子遺伝学 / 接着分子 / 血管新生因子 / 冠状動脈瘤 / ガンマグロブリン / 血管炎 |
Research Abstract |
川崎病は全身中小動脈の血管炎を主体とする乳幼児の熱性・発疹性疾患である。川崎病の現時点での最も大きな問題点は、未だその成因が不明であるということおよび重篤な心血管系の障害を引き起こすことである。しかし川崎病は何らかの微生物の感染を基盤として発症すると考えられるが、病因に関する研究が多数行われているにも関わらず、依然として病原因子は不明のまま残されている。また、近年、血管分子生物学的研究の進歩により動脈硬化などの血管病変の発生機序において各種の細胞接着因子の関与や血管リモデリングの際に血管新生因子(Vascular endothelial growth factor : VEGF)が関与することが明らかになった。今回の研究の目的は、1.川崎病患者における冠状動脈発生と細胞接着分子やVEGF産生能の関係を明らかにすること、2.川崎病児の分子遺伝学的基盤とそれら血管生物学的物質(細胞接着分子やVEGFなど)の産生能との関連を明らかにすることである。急性期の血漿中の細胞接着分子であるセレクチンファミリーの血行動態と冠状動脈障害について検討した。川崎病急性期および亜急性期には、P-およびE-セレクチンは慢性期および対照群に比して明らかに上昇していた。また、冠状動脈瘤を生じた例では生じなかった例に比してP-,E-セレクチンが有意に上昇しており冠動脈瘤発生の予測因子となることが示唆された。この結果は、論文にまとめ受理された(Furui J, Ishii M, et al., Acta Paediatr,2002)。血管新生促進因子であるVascular endothelial growth factor(VEGF)の川崎病急性期の血行動態を35例の川崎病患児において検討した。冠状動脈瘤が形成される症例では有意に高値を示した。この事により川崎病血管障害およびリモデリングにおいてその病態へVEGFが関与している可能性が示唆される。また、血漿中のVEGFと左冠状動脈血管壁の超音波後方散乱信号にて診断した組織性状には密接な関係があることを証明した。このことよりVEGFが急性期の血管リモデリングにおいて重要な役割を果たしていることが解明された。川崎病児のRNAの発現は極めて類似していた。心血管後遺症無しの患児で発現が低く、心血管後遺症有りの患児群にて発現が高いRNAが3種類同定された。心血管後遺症無しの患児で発現が高く、心血管後遺症有りの患児群にて発現が低いRNAが2種類同定された。現在これらのRNAの役割分析を行っている。また、同胞例を含む5症例のRNA配列を解析中である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Ishii M, Himeno W, Sawa M, Iemura M, Furui J, Muta H, Sugahara Y, Egami K, et al.: "Assessment of the ability of myocardial contrast echocardiography with harmonic power Doppler imaging to identify perfusion abnormalities in patients with Kawasaki disease at rest and during dipyridamole stress"Pediatr Cardiol. 23巻. 192-199 (2002)
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[Publications] Muta H, Ishii M, Maeno Y, Akagi T, Kato H: "Quantitative evaluation of the changes in plasma concentration of cardiac natriuretic before and after transcatheter closure of atrial septal defect"Acta Paediatr. 91巻. 649-652 (2002)
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[Publications] Ishii M, Ueno T, Ikeda H, Iemura M, Sugimura T, Furui J, Sugahara Y, et al.: "Sequential follow-up results of catheter intervention for coronary artery lesions aftery lesions after Kawasaki disease : quantitative coronary artery angiography and intravascular ultrasound imaging study"Circulation. 105巻. 3004-3010 (2002)
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[Publications] Muta H, Ishii M, Matsuishi T: "Coronary artery aneuryms after Kawasaki disease in a patient with single coronary artery"Pediatr Cardiol. 23巻. 568-569 (2002)
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[Publications] Furui J, Ishii M, Ikeda H, Muta H, Egami K, Sugahara Y, et al.: "Soluble forms of the selectin family in children with Kawasaki disease : prediction for coronary artery lesions"Acta Paediatr.. 91巻. 1183-1186 (2002)
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[Publications] 牟田広実, 石井正浩, 廣瀬彰子, 古井潤, 菅原洋子 他: "川崎病ガンマグロブリン療法における製剤間での治療効果の比較"日児誌. 106巻. 742-746 (2002)