Research Abstract |
1)紫外線によるメラニン合成促進及びDNA損傷とスキンタイプ等の関係 ヒトを6つの人種(アメリカンインデアン,アラスカ人,アジア人,黒人,ラテン系人,ハワイ人,白人),スキンタイプ,最小紅斑量に基づきグループ化し,ヒト皮膚に最小紅斑量(MED)の紫外線を照射し,1日,7日目後のユーメラニン量,フェオメラニン量,チロシナーゼ,TRP1タンパク量,TRP2タンパク量,DNA損傷の変動を調べた。DNA損傷(シクロブタンピリミジンダーマー(CPD)と(6-4)-光生成物(64PP))は,ヒト皮膚に紫外線を照射し,免疫蛍光法で調べた。一般にメラニン色素は,in vivo, in vitroでDNA光生成物を減少させると報告されているが,DNA損傷/修復の違った人種の皮膚に存在するメラニンの型と量の関係については知られていなかった。DNA損傷(CPDと64PP)は,すべての人種において紫外線照射後,すぐに最大になり,徐々にバックグランドレベルに減少した。1MEDの紫外線によって誘導されたDNA損傷は,アジア人よりも白人の皮膚において著しく高く,アジア人の皮膚のDNA損傷レベルはラテン系,黒人よりも高かった。それに対して,ラテン系,黒人の皮膚のメラニン含量は,アジア人や白人よりも多かった。このことから,DNA損傷は紫外線により敏感な色の薄い皮膚において高く,紫外線により抵抗的な黒い皮膚において著しく低いことが観察された。Fontana-Masson染色で得られたメラニン量とユーメラニン量との間には有意な相関が見られたが,フェオメラニン量との間には有意な相関が見られなかった。 2)スレイティー遺伝子の機能の解析 マウス毛色遺伝子の中でスレイティー遺伝子(Slt)はメラニンの生成に重要な働きをしている遺伝子。と考えられている。このスレイティー遺伝子の機能を詳細に調べるため、スレイティー遺伝子をC57BL/10JHirマウス(ブラック)に導入したコンジェニックマウス(C57BL/10JHir slt/slt)を作成した。このマウスの皮膚の表皮よりメラノサイトを無血清初代培養した。培養したスレイティーのメラノブラスト・メラノサイトの増殖活性を調べたところ、スレイティーのメラノブラストもメラノサイトも増殖活性はブラックと変らなかった。さらに、スレイティーのメラノサイトの分化活性を詳しく培養系で調べた。α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)を加えて培養すると、メラノサイトの分化活性はブラックの約1/5であった。また、分化したメラノサイトのメラニン量もきわめて少なかった。ところがジブチリルアデノシン3':5'環状一リン酸(DBcAMP)を加えて培養するとブラックと同等の分化活性を示した。ところが分化したメラノサイトのメラニン量はやはりブラックに比べて少なかった。これらの結果から、スレイティー遺伝子はメラニンの最終的な生成に関与するだけではなく、MSHおよびその受容体に関係した機構にも影響を与えることがわかった。
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