化学放射線療法が食道癌微小転移に及ぼす影響についての研究

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14570886
• Research Institution: Kansai Medical University
• Principal Investigator: 山道 啓吾 関西医科大学, 医学部, 講師 (70291804)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 山中 英治 関西医科大学, 医学部, 講師 (20210495) ; 中井 宏治 関西医科大学, 医学部, 助手 (40351530)
• Keywords: 食道癌 / 化学放射線療法 / 微小癌転移

Research Abstract

近年,高度進行食道癌に対して化学放射線療法(CRT)を加えた集学的治療がなされるようになり,予後の改善が期待されている。化学放射線療法はそのすぐれた局所効果によりdownstagingをもたらし,切除不能と考えられた症例が切除可能となることも少なくなく,切除例の中には長期生存が得られる症例も認められる。しかし,一方では術後短期間に遠隔転移をきたし,死亡することもある。このような短期間に再発する症例は,治癒切除を施行し得たと考えられても,実際は手術時にすでにリンパ節や遠隔臓器に微小転移が存在していた可能性がある。そこでわれわれは,高度進行食道癌における微小転移の存在を分子生物学的手法で検索し,化学放射線療法が微小転移に及ぼす影響について検討することとした。
平成14年度は,関西医大附属病院第2外科に入院となり,化学放射線療法の対象となった食道癌患者の内,15例でCRT前後,手術前後の末梢血の採取,および手術時の標本の採取を行なった。保存した末梢血からtotal RNAを抽出し,CEA mRNAの検出を行ったところ,CRT前の血液では15例中9例で陽性を示したが,CRT後は1例を除き,陰性化した。この結果はCRTの治療効果とは必ずしも一致しなかったが,CRT後も陽性であった1例は術後早期に血行性転移をきたした。まだ症例数は少ないので今後のさらなる検討が必要であるが,CRTは癌の局所制御以外に微小転移も抑制することが確認され,さらにCEA mRNAの検出は少なくともCRT後の癌遺残の評価に有用である可能性が示唆された。現在,症例を重ね,検討中であり,他の遺伝子の発現や手術前後の変化についても検討中である。