Research Abstract |
末梢小型肺癌のdynamic MRI所見と病理所見,予後との相関に関する検討を下記に発表した。Fujimoto K, et al.,Radiology 2003;227:786-793. 3cm以下の末梢小型肺癌94例を対象とし腫瘍の増強効果と病理像を比較検討した。摘出された肺癌の標本にHE,elastic van Gieson (EVG)染色を,また,CD34,血管新生困子(VEGF)に対する免疫化学染色を施行した。CD34で染色される微小管腔構造を腫瘍内微小血管とし,これを200倍視野域で数え,微小血管数(MVCs)および視覚的に分類した微小血管密度(MVDG)とした。問質量はEVG染色から弾性線維量,膠原線維量を視覚的に群分けした。さらにVEGF発現の有無を記載し、各種増強パラメーターと比較した。 結果は,MVCs,MVDGとMER(最大増強効果比),Slope(MER/Tmax:傾き),WR(単位時間増強効果減衰比)は正相関,Tmax(最大増強に至る時間)は負相関を示し,特にSlope値はMVCsと強い線形(直線)回帰を示した。WRは腫瘍内の弾性線維量・謬原線維量と負相関した。VEGF発現腫瘍は非発現腫瘍に比して,有意にMVCsが多く,Slope値が高く,リンパ節転移症例が多かった。Cox proportional hazards modelを用いた予後因子では,リンパ節転移,Slope値高値,VEGFの発現の3つが有意な予後因子であった。 以上より,次のことが推察された。 1)dynamic MRIによる末梢小型肺癌の増強効果に関しては,早期増強効果は腫瘍内の微小血管数,血管密度と強く関係(正相関)し,時間と負相関するので,血管数が多いものほど強く,早期に,増強される。後期増強効果は,微小血管および腫瘍内間質量に関係し,微小血管が多いほど,間質量が少ないほど,早く増強効果は低下する。 2)末梢小型肺癌の予後因子として,リンパ節転移,VEGFの発現のほか,dynamic MRIの所見としてSlope値高値が有意な因子で,3予後因子をもつ症例の死亡率は83%と効率であった。 3)末梢小型肺癌に対するdynamic MRIを詳細に検討することで,腫瘍内の微小血管数および密度,間質量を推測でき,リンパ節転移の有無を推測し得る可能性があり,また,予後の予測にも役立つ可能性が高い。
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