2003 Fiscal Year Annual Research Report
カテコラミン作動薬はDNAメチル化を変化させて脳内遺伝子の転写を調節するか?
Project/Area Number |
14570906
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
沼知 陽太郎 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (00261636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽良 一郎 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40322713)
沼知 寿美子(吉田 寿美子) 仙台大学, 体育学部, 教授 (50261532)
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Keywords | 覚醒剤 / 薬物乱用 / 統合失調症 / 遺伝子発現 / メチル化 / シナプス蛋白 / 可塑性 |
Research Abstract |
カテコラミン作動薬であるメタンフェタミン(MAP)は統合失調症に類似した精神病を引き起こす。MAPを投与した動物の脳では、遺伝子の長期持続性の発現変化が想定されている。DNA上で5'-CG-3'配列上のシトシンがメチル化されると、下流に存在する遺伝子の発現が抑制される。我々は、MAP投与ラット脳で、DNAシトシンメチル化酵素1型(Dnmt1)mRNAの脳内発現が変化することを見出した。本研究ではこれをふまえて以下の検討を行った。 1 MAPに感受性が高い近交系Fischer344ラットでは、MAP投与で海馬コルチコステロン受容体mRNが減少、感受性が低いLewisラットでは変化を認めなかった。MAPの作用の一部はコルチコステロン依存性で、コルチコステロン受容体はDNAのメチル化を介して遺伝子の転写を制御する。従って、上記2系統の近交系ラットのMAP感受性の差異には、コルチコステロン受容体を介したDNAのメチル化による転写制御が関連していることが示唆された。(Kabbaj, M., Yoshida, S., Numachi, Y., et al. 2003) 2 MAPを投与したWisterラットの脳で、Dnmt2 mRNAの脳内発現は変化しなかった。一方、reelin mRNAは、前頭葉だけで投与後3時間で有意に減少、その後正常レベルに戻った。最近、統合失調症患者の前頭葉でreelin mRNAの発現減少とDnmt1 mRNAの発現増加が報告された(Veldic,2004)。従って、MAPは前頭葉で統合失調症と同様のreelin mRNAの発現減少を引き起こし、これがMAPの精神異常発現作用と関連する可能性が考えられた。(Numachi, Y., Yoshida, S., Yamashita, M., et al. in press)
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Shen H, Numachi Y, Yoshida S, et al.: "Electroconvulsive shock increases serotonin transporter in the rat frontal cortex"Neurosci Lett. 341(2). 170-172 (2003)
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[Publications] Kabbaj M, Yoshida S, Numachi Y, et al.: "Methamphetamine differentially regulates hippocampal glucocorticoid and mineralocorticoid receptors mRNAs in Fisher and Lewis rats"Brain Res Mol Brain Res. 117(1). 8-14 (2003)
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[Publications] Numachi Y, Yoshida S, et al.: "Psychostimulant alters expression of DNA methyltransferase mRNA in the rat brain"Ann N Y Acad Sci. (in press). (2004)
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[Publications] 沼知陽太郎, 吉田寿美子, 曽良一郎: "うつと不安の共通因子"Bulletin of Depression and Anxiety. 1. 8-11 (2003)
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[Publications] 沼知陽太郎, 吉田寿美子, 曽良一郎, 佐藤光源: "ストレス逆耐性仮説"こころの臨床. 17(増刊号)(in press). (2004)
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[Publications] 沼知陽太郎, 吉田寿美子, 曽良一郎, 佐藤光源: "覚醒剤の体内動態と脳内分布"Clinical Neuroscience. 22(6)(in press). (2004)
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[Publications] 佐藤光源, 梶尾靖, 菊池周一, 沼知陽太郎, 西川徹: "脳科学研究の現状と課題(杉田秀夫,高橋清久編)"(株)じほう,東京. 324 (2003)