2003 Fiscal Year Annual Research Report
サルの大脳皮質帯状回ニューロンの空間認知機能の解明
Project/Area Number |
14570919
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
谷渕 育夫 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (40251996)
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Keywords | 帯状回 / 前頭前野 / ODR課題 / 単一細胞外記録 / サル |
Research Abstract |
サルの大脳皮質帯状回の空間認知機能を解明するため、眼球運動を用いた遅延反応課題である記憶誘導性サッケード(ODR)課題とそのコントロール課題である視覚誘導性サッケード(VGS)課題で2頭のサルを訓練し、サルがその課題を遂行中に大脳皮質帯状回で細胞外記録により単一ニューロン活動を調べた。1011個のニューロンが記録され、組織学的検索の結果、記録ニューロンの大部分は帯状回およびその周辺領野に位置していた。記録された帯状回ニューロンのうちODR課題に関連して発射活動を変化させたニューロンは15%であった。ODR課題の視覚刺激呈示期、遅延期、反応期に関連して発射活動を変化させた帯状回ニューロンの割合はそれぞれ10%、10%、13%であり、また大部分の反応ニューロンは方向選択性(多くの反応ニューロンは記録部位の対側に視覚刺激が呈示されたり、対側への眼球運動時に応答)を有していた。また、ODRとVGS課題でサッケードに関連して反応するニューロンが見つかったが、それらニューロンのうちあるものはODR課題のみ、またはVGS課題のみに応答を示した。このような課題依存性サッケード関連ニューロンは眼球運動そのものに関連した反応ではなく、記憶誘導性あるいは視覚誘導性のサッケード情報を担っていると考えられる。帯状回は前頭前野背外側部(46、9野)、後頭頂葉(7野)や視床背側内側核外側部と解剖学的結合があり、これらの部位でも帯状回ニューロンと同様のODR課題遂行時に発射活動を変化させるニューロンが報告されている。したがって、帯状回ニューロンは上記脳部位を含むニューラル・ネットワークの中でスペーシャル・コーディング、ワーキング・メモリー、エフェレンス・コピーなどの空間認知機能を担っていると考えられる。
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