2003 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス性精神障害の病態形成に関与するJNKs/c-Jun axis障害の研究
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14570925
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森信 繁 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (30191042)
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Keywords | c-Jun N-terminal kinases / c-Jun / ATF-2 / 大脳皮質前頭部 / 海馬 / 拘束ストレス / 母子分離 / リン酸化 |
Research Abstract |
ストレス性精神障害の病態形成に関連するストレス性のアポトーシスを含む細胞変性の機序に、c-Jun N-terminal kinases(JNKs)/c-Jun情報系がどのように関与しているかを明らかにする目的から、平成14年度に引き続き平成15年度は以下の研究を行った。 1)急性拘束ストレスおよび母子分離ストレスのおよぼす成熟期急性拘束ストレス性c-Junリン酸化への影響 急性拘束ストレス(120分)負荷による成熟期ラット海馬でのC-Junリン酸化への影響を、Western blot法を用いて解析したが、Ser63,ser73のリン酸化に有意な変化はみられなかった。母子分離ストレスによる成熟期ラット海馬での急性拘束によるc-Junリン酸化への影響を同様の方法にて検討した結果、Ser73のリン酸化が非ストレス負荷群に比して有意に減少していた。 2)急性・慢性拘束ストレスの及ぼす成熟期ラット脳内ATF-2リン酸化への影響 急性拘束ストレス(15,30,60,90,120分)負荷による大脳皮質前頭部(FC)・海馬(HP)のATF-2リン酸化の変化を、Western blot法・免疫組織染色法にて検討した。その結果FCでは、拘束ストレス60分およびそれ以上の時間で、ATF-2リン酸化に有意な低下がみられた。ATF-2リン酸化の低下は、拘束ストレス終了後1時間の時点で、すでに対照群(非ストレス負荷群)と同様のレベルまで回復していた。HPでは対照群でのリン酸化ATF-2の発現が弱く、ストレス負荷に伴う変動を解析することが出来なかった。またリン酸化ATF-2はDAPI染色による比較検討から、FCでは細胞核内にみられ全層に存在することが明らかとなり、ストレスによるリン酸化の低下もFC全層でみられた。慢性拘束ストレス(60分間・7日間)負荷によってFCのATP-2リン酸化は、有意に低下していた。 これまでの2年間の研究成果から、急性・慢性ストレスによってJNK情報系の機能の減弱することが解明された。しかしながら大脳皮質前頭部ではJNK/ATF-2系の機能低下が、海馬では特に母子分離負荷を受けたストレス脆弱群でJNK/c-Jun系の機能低下がそれぞれ引き起こされ、部位によって影響される情報系の異なることが示された。今後はJNKの細胞内基質群のストレスによるリン酸化を検討して、ストレス性精神障害の発症機序に関連したJNK情報系のメカニズムを一層明らかにすべきと思われる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tsuji, S., Morinobu, S et al.: "Lithium, but not valproate, induces the serine/threonine phosphatase activity of protein phosphatase 2A in the rat brain, without affecting its expression"Journal of Neural Transmission. 110. 413-425 (2003)
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[Publications] Katagiri, H., Morinobu, S et al.: "Effect of repeated treatment with lamotrigine on locomotor activity and on DOI-elicited wet dog shakes in rats"Biogenic Amines. 17. 149-159 (2003)
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[Publications] Morinobu, S et al.: "Influence of immobilization stress on the expression and phosphatase activity of protein phosphatase 2A in the rat brain"Biological Psychiatry. 54. 1060-1066 (2003)
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[Publications] Suenaga, T., Morinobu, S et al.: "Influence of immobilization stress on the levels of CaMKII and phospho-CaMKII in the rat hippocampus"International Journal of Neuropsychopharmacology. (in press). (2004)
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[Publications] Sawada T., Morinobu, S et al.: "Reduction in levels of amphiphysin1 mRNA in the hippocampus of aged rats subjected to repeated variable stress"Neuroscicnce. (in press). (2004)
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[Publications] 田中和秀, 森信繁 他: "気分障害治療のための合理的薬物選択アルゴリズムの開発"脳の科学. 25. 1031-1038 (2003)