2003 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病の素因モデル動物を用いた、うつ病関連遺伝子の探索
Project/Area Number |
14570926
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
渡辺 義文 Yamaguchi University, 医学部, 教授 (90182964)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 学 山口大学, 医学部附属病院, 助手 (80314805)
土屋 健 山口大学, 医学部附属病院, 助手 (00346561)
青木 岳也 山口大学, 医学部附属病院, 医員(臨床)
|
Keywords | ストレス / 脆弱性 / 遺伝子発現 / ラット脳 |
Research Abstract |
我々はこれまで素因的にストレス脆弱性を有するうつ病動物モデルの開発とその動物モデルを用いたうつ病の病因、病態の解明を目指して研究を続けている。その中で、視床下部-下垂体-副腎(HPA)系ネガティブフィードバック機能、c-fos発現反応をストレスに対する脳内適応反応の指標とし、純系ラットFisher344ラットが生来的にストレス脆弱性を有することを確認した。更に、HPA系のストレス適応不全が抗うつ薬の慢性投与によって回避されることから、Fisher344ラットのうつ病動物モデルとしての妥当性が確認した。そこで、本研究では、Fisher344ラットを用いた、うつ病関連遺伝子の探索を行うため、慢性ストレス負荷によりストレス不適応状態に陥ったFisher344ラットと、適応状態にあるSprague-Dawley(SD)ラットの視床下部での遺伝子発現の比較を行った。その結果、Fisher344ラットで特異的に発現が変化している約20種の遺伝子を同定した。その中でcytochrome c oxidase(COX)(subunit IV)とphosphorylase b kinase遺伝子に着目した。Cytochrome c oxidase(COX)遺伝子はFisher344ラットで特異的に発現が低下しており、この低下は海馬でも確認された。一方、phosphorylase b kinase遺伝子については、Fisher344ラットの視床下部で発現量が高かったが、海馬ではSDラットと有意差がなく、脳部位特異的な発現差のあることが判った。 Cytochrome c oxidase(COX)及びphosphorylase b kinase遺伝子共にストレス脆弱性、神経可塑性、ひいてはうつ病への関連が示唆されている。今後は脳内ストレス適応機構への関与の解明を目指し以下の事項について検討を行う予定である。1)ストレス不適応状態にあるFisher344ラット脳内での、2遺伝子の発現状態をin situhybridization法により精細な脳部位発現量の検討。2)ストレスと平行した抗うつ薬慢性投与による、Fisher344ラット脳内の2遺伝子の発現状態の変化の検討。3)1)により明らかにされるストレス不適応状態で2遺伝子の発現が抑制される脳部位において、SDラットを用いてアンチセンス法により2遺伝子の発現を阻害した場合のストレス適応反応障害の検討。
|