2002 Fiscal Year Annual Research Report
エタノールによる肝臓脂質代謝障害は痴呆を増悪させるか?
Project/Area Number |
14570936
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
池田 官司 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30232193)
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Keywords | アルコール性痴呆 / ApoE / 脂質代謝異 / CREB / アポトーシス / エタノール |
Research Abstract |
エタノールには痴呆増悪因子としての側面があることが多くの疫学的研究で報告されているが、様々な病態が存在しており、その分子生物学的な基盤はいまだに明らかにされていない。アルコール飲用は肝臓の脂質代謝にダイナミックな影響を及ぼす。また、肝臓と認知機能が密接に関連していることは、肝移植後の性格変化や肝性脳症での認知障害などの事実より明白である。アルコール性痴呆は中枢におけるアルコール関連障害の最も重篤な病態であり、アルツハイマー病と共通の臨床像として記憶・認知障害を呈するが、肝臓での脂質合成・代謝を介して中枢神経系になんらかの影響を与えていることを強く示唆する。近年アルコールとApo Eに関する知見が集積してきており、アルコール飲用により血清アポリポ蛋白が増加するとの報告がみられる。エタノールによる神経細胞障害とアルツハイマー病発症の機序がApoEを基盤とした分子レベルでの共通点を有しているとの仮説を立てることが可能である。本研究はApoEのフェノタイプによって引き起こされる脂質代謝の変化が細胞内2次メッセンジャー、さらに下流に位置する転写調節因子であるCREBの関与を介して神経細胞死(アポトーシス)に与える影響を分子生化学的に解明しようとするものである。本年度は、アルコール依存症者死後脳におけるApo Eのisoformによる分布状況と、アルツハイマー病者、認知障害がみられるアルコール依存症者の血清脂質と脳形態学的変化の関連について検討を行っている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 池田官司, 他: "アルコール依存症の診断と概念の変遷"日本アルコール精神医学雑誌. 9(1). 19-28 (2002)
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[Publications] 池田官司: "依存症の臨床的基礎を学ぶ"日本アルコール関連問題学会雑誌. 4. 53-56 (2002)
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[Publications] 池田官司, 他: "タバコ依存症とアルコール依存症の認知機能の差異"日本神経精神薬理学雑誌. 22(5). 211 (2002)
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[Publications] 齋藤利和, 橋本恵理, 志賀満江, 長谷川裕子, 池田官司, 他: "北海道における喫煙とたばこ依存の実態 第2報:診断基準による差"日本アルコール薬物医学会雑誌. 37(2). 111-119 (2002)
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[Publications] 佐々木竜ニ, 佐々木信幸, 小澤寛樹, 池田官司, 他: "Milnacipranの使用経験"臨床精神薬理. 5. 93-101 (2002)