2002 Fiscal Year Annual Research Report
分裂病の神経発達障害モデル動物のNMDA受容体グリシン部位調節の発症予防効果
Project/Area Number |
14570937
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
丹羽 真一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (30110703)
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Keywords | 幼若期海馬傷害ラット / 神経発達障害仮説 / NMDA受容体 / グリシン / methamphetamine |
Research Abstract |
今年度我々は、まず生後7日目の仔ラットの両側腹側海馬をイボテン酸を用いて傷害し幼若期腹側海馬傷害ラットを作成した。これは統合失調症の神経発達障害仮説に基づくモデルラットであり、これまでに様々な知見が報告されている。このラットは思春期前に当る生後35日目では異常行動を示さないが、思春期後に当る生後56日目に異常行動を示すという特徴を持つ。これはドパミン神経系の異常によるものと推測されているが、我々は以前、モデルラットにグルタミン酸神経系にも異常が生じている可能性を報告した。そこで、グリシン慢性投与がこの異常行動を抑制するのかを検討するために、生後42日目のモデルラットに持続注入ポンプ(alzet ; osmotic pump,2ml/2week model)を埋め、左側脳室内に1mMグリシンを慢性投与した。 その後、グリシンの持続投与が終了する生後56日目に新奇環境変化(HAB)60分間、1.5mg/kg-methamphetamine(MAP)腹腔内投与後90分間の移所運動量を測定した。現在までのデータは、傷害-グリシン投与群の移所運動量は平均がPD35-HAB=603cm, PD35-MAP=8,802cm, PD56-HAB=374cm, PD56-MAP=13,201cmあり、対照-グリシン投与群の移所運動量はPD35-HAB=1,478cm, PD35-MAP=2,326cm, PD56-HAB=513cm, PD56-MAP=10,281cmあった。幼若期海馬傷害ラットは生後56日目の移所運動量が対照群に比べて有意に増加するものであるが、傷害-グリシン投与ラットには対照群と比較して有意な移所運動量の増加は見られなかった。しかし、これらのデータはN=2とまだ少数であり断定は出来ない。今後症例数を増やすとともに、傷害-人工脳脊髄液(ACSF)投与ラットや対照-ACSFラットも同様に測定することで、グリシンの慢性投与がどのような影響を及ぼすのかが確実になるものと思われる。また、今後はmicro-dialysisを用いた研究や組織学的検討を随時行っていく予定である。
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